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転生侯爵令嬢の溺愛物語

第5章 王子の中の王子


放課後、急いで帰り支度をして教室を出ようとすると、どこからか乏す声が聞こえて来た。

「誰かさんのその上着を、見せびらかしているつもりか?私は特別とか、馬鹿なことを考えているのではないのか?」

この声は、あの王子だ。王子って、こんな厭味ったらしい性格だったっけ?本当に王子という存在に相応しくない言い分だな。

私は何の反応もしない。勿論、目も合わせないし無視だ、無視と言う名の気付かないフリに限る。そうすれば、相手も諦めて・・・。

だったのに、シェラザード様の上着を乱暴に奪われた。人が折角、綺麗に畳んで大事にしていたのに。

「私から返しておいてやるからお前はこのまま帰れ。」

反論することは無駄だと思い、了承の言葉を吐く前にその上着は更に奪われた。

「外まで筒抜けだったぞ、ロイド。学園だとは言え、その物言いは王族としてどうなんだ?それに・・・折角、アメリアが大事に取って置いたものを、幾ら幼馴染みの私のものとは言え粗雑に扱い過ぎないか?」
「それは・・・。」
「受けた恨みを腫らすかのような立ち振る舞いだな。これ以上、アメリアに関わるな。王族らしい振る舞いが出来ないのなら猶更だ。アメリア、行くぞ。」

私は王子の前を無言で横切り、シェラザード様の後を追った。

今の王子は、苦悶の表情かはたまた・・・。

「次、何かあったら私に言え。トルン様にも伝えておく。」
「・・・はい。」

シェラザード様は王子の幼馴染みだ。決して、王子のことが嫌いな訳じゃない。王子も、シェラザード様に全幅の信頼をおいているように見える。

そして、兄弟揃って・・・シェラザード様を欲している。

「シェラザード様は大丈夫ですか?」
「えっ?大丈夫、とは?」
「あ、いえ・・・私のことですみません。」

大きな手が私の頭を撫でる。

「アメリアは何一つ悪くない。ロイドのことなら気にするな。あまり我儘が過ぎるなら、私からも働きかけておく。」

どこまでも優しくて、優しくて。

私はお礼を言うことしか出来なかった。

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