第5章 王子の中の王子
「やぁ、久しぶり。サザライト嬢。」
「へっ?」
「間に合った様で良かったよ。」
はい?間に合った?何に?
「怪我はない?」
「は、はい。あの・・・有難うございました。ダグラス様。」
「間違いじゃないけど、アレも同じ名だからトルンでいいよ。たぶん、シェラも僕なら許してくれるんじゃないかな?」
この人は、第一王子。あの王子の兄。見た目は似ているし、更に王子度が高い。年齢は二つ上だ。
「あぁ、少し待っててね。」
私をその場に残し、真っ青で打ち震える蝶たちに向き合った。
「学園とはいえ、いい度胸だね。今日のことは、僕から君たちの家に報告しておくよ。だから・・・明日から、ここに来なくていいから。」
顔は笑っているのに、恐怖を感じる。碧眼は綺麗なのに、全然、笑顔に反して笑っていない。
泣き叫んで許しを乞う蝶たちを無視し、もう話しは終わったと言わんばかりに私の方に顔を向けた王子。
「シェラのところに行く?」
「えっ?どうしてですか?」
「あ~、そうか。まだ、うん、分かった。取り敢えず、付いてきて。」
第一王子の言い分を拒否は出来ない。令嬢たちの事が気になり、振り向こうとしたけれど・・・王子のその行為を拒絶する一言に私は抗えなかった。
将来、国王になる人だ。こういう部分もないとダメなのかもしれない。でも、どこに行くのだろう?
暫く歩いた先には、生徒会室。中にいたのは、副会長を筆頭に生徒会の面々とシェラザード様がいた。
「サザライト嬢が虐められているから、仕事をさせたかったら助けて来いってシェラに言われてね。」
と、何でもないように言い放った王子。
「それと、僕の愚弟が見て見ぬふりしたことも追及しておくから安心して。大丈夫、ちょこっとだけコテンパンにするだけだから。」
コテンパンは最早、ちょこっとではないと思うのだけど。
「知ってる?愚弟は、シェラを側用人に欲しがってるって。」
「それは何となく・・・。」
「シェラは僕のものなのにね。」
へっ?第一王子のものなの?
「トルン様、気持ちの悪いことを言わないでください。私の忠誠は国王のもの。但し、私のものに手を出さなければ・・・という条件はありますが。」
「全うな返答だ。その意思が変わらないのなら、僕は頑張って国王を目指すよ。シェラが僕の陣営にくれば、自ずと付いて来るだろうしね。」