第1章 銀髪のイケメンを見つけました

王立学園に入学して、五日目の昼休み。

いつもの様にお弁当を持って、いつもの場所に向かった私。今日も平和だと噛み締めつつ、淡いブラウンカラーのベンチに腰を下ろす。

「今日のランチは頑張って・・・ん？足？」

生け垣の端から、人の足だけが見える。お化け？と思ったが、こんな昼間にそれも足だけのお化けはないと思い直し、そっと近づく。

物音を立てずに近付き覗き込めば、銀髪のイケメンが倒れていた。ゲームの世界では見たことのない容姿。

こんなイケメンなのに、攻略キャラじゃないなんて・・・と思いつつも、声を掛ける。薄っすらと開いた瞳は、綺麗なアメジストの色だった。

美しい！！心の中で叫んだけれど、声には出すことはどうやら踏みとどまれた様だ。

銀髪イケメンの顔は、真っ青だ。少し呼吸も荒いように思う。

「あ、あの、大丈夫ですか？誰か呼んで来ましょうか？」

私の力では、銀髪イケメンを運ぶことは到底不可能だ。

銀髪イケメンはハッとして目を見開き、ヨロヨロと立ち上がった。

「必要ない。」

短い返事だったけれど、足元はフラフラだ。どう見ても、体調が悪いようにしか見えない。でも、銀髪イケメンの切れ長の目が関わることを拒否しているのは明白。

本人も必要ないと言っているし・・・と思った瞬間、銀髪イケメンはその場にしゃがみ込んだ。お節介な事は分かってる。でも、攻略キャラじゃないからと言う理由で、私は駆け寄って支えようとした。

「私に触るな。」

拒絶の言葉を口にされたけれど、私はハッキリとその意思を拒絶しては無理矢理ベンチへと誘導する。最初は拒絶していた銀髪イケメンだったけれど、どうやら具合の悪さに抗うことが出来なかったのか大人しくなった。

ベンチに座らせると、私は持って来ていた飲み物でもと彼に差し出した。普段なら、関わりない人からの飲食物など受け取らない。

でも、私はお節介ついでに水筒を口に突っ込んだ。見開いた瞳と、嚥下する動作に満足した私。あ、でも・・・こんなことをして怒らせたかもと急に怖くなったチキンな私。

「・・・・・・い。」
「えっ？」
「美味いと言ったのだ。」

いやいや、水筒の中身は普通一般の紅茶・・・あれ？紅茶が入っている水筒は鞄の中に収まったままなのが見えた。じゃあ、何を渡した？