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転生侯爵令嬢の溺愛物語

第32章 且つての楽園


呆然とする私の肩に置かれた手は、お父様のものだった。

「驚かせただろう?だが、話しを相談したのは私からなんだ。」
「えっ、お父様から?」
「アメリアは、トルン殿下がシェラザードを側用人として求めていたのは知っているだろう?」

私はそれを聞いて頷いた。

「それには続きがあるんだ。トルン様は、王妃としてアメリアを望まれている。10年前の王宮で集められた茶会では、未来の王妃と王子妃を選ぶものだったのだが、アメリアはロイド殿下を求めていただろう?」

私の前の私の黒歴史だ。一目惚れしたらしい私は、猛アタックをしたのだ。嫌がる王子に引くことなく。

「その時、トルン様はアメリアを見初めていたんだ。アメリアがロイド殿下を思っている内は、将来何とかできると考えていたのだろう。だが、そこへシェラザードと婚約を交わしてしまった。」
「諦めたりは・・・。」
「10年越しの片思いだ。国王陛下も不憫に思われた様で、息子可愛さにあの様な招待状を。実を言うと、ロイド様からも以前お声を掛けられたことがあったんだ。」

えっ?本当に今更?

「勿論、お断りしたよ。確かに強引だったアメリアの事は誉められたことではないが、あんなにも邪見に扱ったのだ。親としても、何を今更だと思った。」
「私のせいでこんな事に・・・。」
「余り時間は無い様だ。続きは、後にしよう。」

転移陣が光ったかと思うと、その眩しさに私は目を閉じた。その瞬間、遠くから荒々しい人々の声が聞こえた気がした。

「アメリア。」

そっと触れた肩。声はシェラザード様のもの。目を開ければ、見知らぬ何処かの屋敷の中。

「ここは?」
「且つての、私の先祖が住んでいた城だ。」
「先祖?」
「伝記が好きなアメリアなら、知っているのではないか?シュリア王国の名を。100年ほど前に戦争で滅ぼされた国の事だ。」

知ってる。国を囲む様に森が茂り、自然豊かな国だったらしい。その豊かさに目を付けた大国に攻め滅ぼされ、荒れ地と化した今では誰も済んでいない最北端の土地。

自然が豊かなのは魔法のおかげで、人がいなくなってからというものただの森となってしまっていると書いてあった。

「ウチの一族の結束は強いって言うのは、その一族がこの国の出だからだ。今の近隣諸国は、あの頃の様に大国が戦争を仕掛けてくることはない。だから、このタイミングを選んだ。」

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