第31章 溺愛というなの欲
そう言えば、教室の中だった。お互いに真っ赤になりつつも、周りは「相変わらず仲いいなぁ~」「相思相愛ね~」「お互いに溺愛し過ぎ~」とかチラホラと声が聞こえ、余計に恥ずかしい思いをしたのだった。
でも、この事があったから、それ以降はあんな事は続くことはなかった。たまに、タガが外れそうになるけれど大事にはしてくれている。
一度、「浮気したら許さないから」と冗談交じりで言ったら、「私の執着心を馬鹿にするな」と返されて、更に、「浮気したら物理的に繋いで一生日の目を見ることなく私が時間のある限り抱き潰す。相手は処分する」と怖いセリフを聞いて慄いた。
そうそう、あの攻略キャラのことだけど・・・他の令嬢に手を出そうとして、押しかけてきたお腹の大きな婚約者を見て逃げ出したらしい。
そして、婚約者は今ではケルト家に住んでいて、既に手綱を握られているとのこと。
この世界で恐妻という言葉が使われる様になったのは、この女性がこの国で手綱を握ってから。頑張って余所見をしないで済むように、しっかりと見張っていて欲しいと思う。
私はというと、泣き落としが思いの外効いた様で、更に輪をかけて優しくなりました。これで攻略キャラは完遂。
この先はただ平和に毎日が過ぎていくのだと思っていたのだけど・・・。
そうは問屋が卸さないとばりに、公爵家に滞在している私の元に一通の招待状が届いた。送り主は、あの時に欲を出した国王陛下。
内容は、私をお茶会に招待するという文面。同伴を許可せず、一人で赴くようにと書かれていた書簡はシェラザード様だけでなく公爵様、そしてシェラザード様のお母上をも大激怒させた。
日時は、一週間後の週末。王宮より、迎えを寄越すと書かれていた。
その日の夜。私はアシュリー家の面々だけでなく、侯爵家の家族も交えての話し合いが行われた。話し合いと言うが、決定事項を伝えられただけなのだけど。
でも、それはずっと前から公爵家と侯爵家の間で、何度もやり取りされていた話題だったらしい。
「国を出るって、本気ですか?」
「ああ、本気だ。アメリアはシェラザードと将来を共にするなら、この国では難しいだろう。残念だが、アメリアの意思を聞く段階ではない。決まったことだ。」
公爵様の凛としたその佇まいに、私は両親を見てシェラザード様を見た。そして、実感したのだ。
