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転生侯爵令嬢の溺愛物語

第29章 罠と全力魔道具


「子が出来れば、また違ったのだろうが。ロイドに子は成せない。前回の事でな。それに、事実を突きつけておいてやった。」
「事実ですか?」
「アイルはロイドが初めてではない。バレていないと思っているだろうが、あちこちで摘まみ食いしていた。」

それなのに、シェラザード様が好きだと言うの?

「似た者兄妹だなと思っていた。まぁ、私には関係のないことだからどうでもいい。」
「バクサー家はどうなるのでしょう?」
「ん?この国への立ち入りは禁止。それくらいだな。ただ・・・その後の計画を潰せたのは僥倖だった。」

その続きを聞きたくて、シェラザード様を見ればスッと表情を失くした。

「それ以上は、知らなくていい。」

それは、何処を見ているのか分からない冷たい目だった。思わずビクッと体を跳ねさせると、シェラザード様は私を抱き締めた。

「悪い、怖がらせた。」

その声があまりにも優しくて、止まっていた息を深く吐いた。身体が離され、シェラザード様は立ち上がった。

「話しは以上だ。視察に行く。」

視察の場所は、町の一角にある大きな倉庫。中に入ると、見覚えのある蓮根が山積みになっていた。その傍らでは、何故か蓮根チップスの山も見える。

さっきの事など頭の片隅にやった私は、その光景を見て歓喜に沸いた。領民に混ざって、蓮根チップスを食す私をシェラザード様は見ていた。

その直ぐ傍に急に現れた桃色頭の二人が、シェラザード様と話しをしている。私が見ていることに気付くと、フラン様は大きく手を振ってくれた。

アラン様は控え目に。うん、可愛い。

そして、相変わらずシェラザード様のあの瞳は大層美しい。その瞳に吸い込まれながら、私は蓮根を口に入れ・・・それを見たシェラザード様は表情を変え笑った。

前世でテレビ越しにイケメンを見ながら、お菓子を食べているかのような事をしてしまった事に顔を赤くする私。

そして、私は知らない。

あのドレスに合わせたチョーカーが、とんでもない高性能の魔道具だと言うことを。

ただ、それに気付いていた侯爵家の家族たちは、ひっそりと真っ青になっていた。

知らないのは本人だけ。



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