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転生侯爵令嬢の溺愛物語

第22章 癇癪と殺意


昨日は怖かったなぁ・・・と、翌日の朝、支度をしながら思い出していた。留学時に、シェラザード様がどんな扱いを受けていたのかは私には分からない。

馬車の中では、ずっと黙ったままだったシェラザード様。私は何も言えず、でも、しっかりと握り締められていた手によって不安になったりはしなかった。

そろそろお迎えに来てくれる時間。アシュリー家の馬車が見え、私は玄関へと向かった。馬車から降りて来たシェラザード様は、何処となく疲れた顔をしていた。

「あの・・・。」
「馬車の中で話そう。」

珍しく苦笑いするシェラザード様に私は頷いて、馬車に乗り込んだ。が、まさか他に人がいるとは思ってもみなかった。

「おはよう、サザライト嬢。ご機嫌は如何かな?」
「おはよう、サザライト嬢。いきなりで驚かせたな。」
「お、おはようございます。」

二人の王子が同乗していた。これで、どんな話しをされるのやら?

「先ず、王女が昨晩、アシュリー家に来た。」
「はい?」

まさかの行動力に私は驚きを隠せなかった。シェラザード様の話しはこうだった。

*****

凄まれた時は驚き過ぎて何も言い返せなかった。しかし、気分が落ち着いてくると、王女相手に不敬な物言いだと大激怒した。勇み足でアシュリー家に突撃したが、門前払いされて王宮に帰らざるを得なかった。怒りは収まらず、王子に直談判したらしい。王女は自分が言えば、王子が罰を与えると疑わなかったが拒否される。そこに、婚約者が宥めようとしたが、火に油を注ぐ結果にしかならなかった様で、婚約破棄だと叫んではアッサリと捨てたとのこと。そこへ通りがかった兄王子。王女が王子を突き飛ばし、兄王子に今度は直談判した。言う通りにすれば、次の婚約者にしてあげると言って。

*****

「それで、その後は?」
「男の方は国に返す事になった。この国で、あんな男に引っかかる令嬢はいない。だから、言葉通りに一人だ。」

私は兄王子を見た。ニッコリと微笑み返してくれた兄王子。

「僕がどんな返答したのか気になる?」
「お聞きしても良いのなら。」
「笑っちゃった。」

はい?拍子抜けするほどのあっけらかんとした台詞だった。

「僕が笑っちゃったから余計に怒らせちゃったけど・・・どうでもいい事だよね。でもね?この国を下に見ている事は許せないかな。」

背筋がゾクッとした瞬間だった。


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