第21章 瞳の中の熱
その【次】は、放課後に起こりました。
「アメリア、手を。」
「ありがとうございます、シェラザード様。」
いつもの様にシェラザード様に手を引かれ、教室を出た時に超音波かと思う程の甲高い声が聞こえた。声の方も見なくともその発信源が誰かなんて分かる。
周りの学生たちは、眉を顰めている。普通の貴族なら、こんなはしたない真似などしない。シェラザード様の顔を見たけれど、どこ吹く風だ。
私たちが立ち止まらないから、ずっと、後ろから超音波が発せられている。いい加減、耳が壊れそうだ。
が、途中でシェラザード様が何かに気付かれた様で、いきなり向かう先が変更された。そして、それは今まさにナンパ中の王女の婚約者とまた別の令嬢たちへだった。
「お話し中すみません。貴方の婚約者が、お探しの様でしたよ?あぁ、ほら、いらっしゃった。」
超音波は疲れたのか、でも、王女らしからぬ顔でこちらへ近づいて来ました。思わずシェラザード様の後ろに隠れる私。ナンパされていた令嬢たちは、そそくさといなくなりました。
「この王女である私に、こんな扱いをするなど万死に値します!!ですが、私も悪魔ではありません。貴方が今日私をエスコートし私との時間を過ごすと言うのなら不問にしてもいいわ。さぁ、私をエスコートしなさい。」
「何をしてらっしゃるのですか?王女様の婚約者は貴方でしょう?さぁ、婚約者様をエスコートし婚約者様の望まれる通りに婚約者同士としての時間を過ごして下さい。」
シェラザード様が、婚約者とたくさん言った。王女も勿論だけど、婚約者の方も「えっ?」と言う顔をしています。
「私は王女様が貴方を探していらっしゃる様でしたので、たまたまお見掛けして声を掛けただけ。では、私たちはこれで失礼致します。」
慇懃な礼をしては、私の手を引いて歩き出そうとした。でも、先に我に戻った王女がシェラザード様の腕に触れようとしてきた。
さっと身をかわすと、さっきまでのシェラザード様の表情ではなくなってい。怒りを含ませた目が、王女に向けられていたのだ。
「私に触れないで頂きたい。」
それは、明確な王女に対する拒絶だった。きっと、こんな態度を取られたことは初めてだったのだろう。その真っすぐな鋭い瞳に、王女は何も言えないようだった。