第19章 デートと嫉妬
流石、公爵家。前世の図書館並の蔵書の数々である。私が好みそうなと言うものを、何故か執事さんも把握していて色々と案内して貰った。
パラパラとめくり、私は直ぐ傍の椅子に座って目を走らせた。近隣諸国の歴史ものである。近隣諸国と言っても、何か国も存在するので、蔵書の数も多い。
一度読み出せば、周りに注意はいかない訳で・・・いきなり、背後から抱き締められて体が飛び上がりそうになった。直ぐ横には、シェラザード様の綺麗な顔があった。
「お話しは終わられたのですか?」
「あぁ、終わった。その本は・・・アメリアは本当に歴史が好きなのだな。」
「そうですね。あ、この後、何かご用はありますか?」
すると、スッとシェラザード様が離れた。驚いて振り返ると、俯いたままだんまり。
「私は、帰った方がいいですか?」
そう言った私に、吃驚した目が向けられた。
「・・・嫌だ。」
いつもなら、ダメだって言うのに今は嫌だと言った。その言葉は、シェラザード様の真実だろう。
私は本を閉じては席を立ち、シェラザード様の目の前に立った。揺れるアメジストの瞳が私を見ている。
「近々と仰っていたお話しは、今日ではダメですか?それとも、私に話すに値しないと思い直されましたか?」
「そうではない。・・・愉快な話しではないが、聞いてくれるか?」
「愉快だろうがそうでなかろうが、シェラザード様のお話なら何でも聞きます。」
以前、シェラザード様が私に言ってくれた言葉だ。私だって、大事に思う人くらいは無碍にしたくない。それが、愉快な話しじゃなくても。
「私の部屋に行こう。本はまた用意させる。」
先に歩き出したシェラザード様の手を、私は掴んだ。嫌がられることなく、その手を握り返してくれた。
部屋に紅茶とお菓子を用意して貰い、メイドさんが部屋を出てシェラザード様は口を開いた。
ドキドキするが、ちゃんと聞き洩らさないようにしっかり聞こうと思う。