第10章 エーデルワイス
ぐるぐると考えを巡らせていると兄にふわっと抱きしめられた。
「東堂…お前がウチのブランドをもうずっと着てないことは分かってる。分かってて渡したんだ。兄ちゃんと一緒に強くなろう、東堂。このドレスワンピな、兄ちゃんが初めてデザイナーさんと1から一緒にデザインしたやつ。お前に似合うと思ってお前のために作った。兄ちゃん自慢の新作だ。どう…かな?」
『おに…おにいちゃ…っ』
すっごく可愛い。私が今までよりもっと前を向けるようになんて…私の兄はどこまで優しいのだろうか。そんなの着るに決まってる。嬉しくて涙が止まらない。
「相変わらず泣き虫だな…ははっ
せっかく可愛いんだから笑え!
ほら、早く着替えて兄ちゃんに見せて?」
『うんっ着替えてくる!』
深呼吸をして袖を通す。一瞬心臓がギュッとなった…だけどサイズも何もかもがフィットする。今まで着たどんなドレスよりも素敵。私のために作られたドレス…。今まで避けてたけれどお兄ちゃんのおかげで今までよりもっと前を向ける気がした。
『じゃーん!どう??』
「すっごい似合ってる…綺麗だよ
着てくんなかったらどうしようかと思った!
はあー、お兄ちゃん嬉しいな」
『こんな素敵なドレス…着ないわけないよ』
「よしっいくぞ!」
『うんっ』
そのあとスーツに着替えた兄と2人で瀬川に送ってもらい六本木にやってきた。久しぶりだな…。今までは1人で買い物に来たりしてた。だけど両親と何度も訪れた場所だから何となくあれからは来ていなかった。両親との思い出が多い場所に1人で行けるほど私の心は強くなかった。でも今日はお兄ちゃんがいるから…なんだって大丈夫な気がする。
「いらっしゃいませ
お待ちしておりましたらら様」
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『んんーおいしい』
「東堂の笑顔が見られて兄ちゃん嬉しいよ。」
『連れてきてくれてありがとうね』
「お前の為ならお易い御用だよ」
ほんとに全部全部美味しくてほっぺが落ちそう…。デザートには大好きなガトーショコラを頼んだ。美味しすぎてもう1個食べたいくらい…。今度東卍の皆とも来たいなあ…。
「そろそろいこうか」
『うん、あ、御手洗いってもいい?』
「もちろん、まってるね」
『ありがとう行ってくるね』