第6章 男の子
あー、30分は経ったかな…。
10分前くらいに東堂が寝返りをうって俺の方を向いた。俺に抱きついて離れない。腕に東堂の柔らかいものが押し付けられていて今にも理性が飛びそうだ。がんっばれ俺。だけど俺のタカシくんは正直で下着の中で苦しそうにしている。ほんと今はコイツが起きないことだけを祈る。
『んっ…うっ』
え?おいおい絶対おきんなよ…!
『うっんぐ…ひぐっうぅ…』
え?泣いてんのか?
まって…バレた?怖がらせた…!?
「東堂っ!これはちがくて…!ほんっとわるい!何もしねえって!怖がらせて悪かった!」
『……ないで…っ置いて行かないで…っ
お父さん…あ母さん…私を置いて行かないで…!』
え…?そっか…。
両親を亡くしたあの日からこいつは1人で寝られなくなった。連日ニュースで流れていた墜落しながら炎をあげる飛行機がこいつの目に焼き付いていて、目をつぶれば思い浮かんでしまうらしい。いつもは瀬川さんがこいつが寝るまで付いてるけど瀬川さんに今日は俺がいるんでたまには休んでくださいと言って俺が引き受けたのだ。
お前は今どんな夢見てんだ…?こいつがいつも明るく振る舞うから時々忘れそうになる。まだ癒えてねえんだ。そりゃそうだろ。まだ中学生の女の子だ。大好きな両親が突然いなくなって耐えられるわけないんだ。
涙で張り付いてしまった髪の毛を耳にかけ、こぼれ続ける涙を全部全部ふいてやった。そしてそっと抱きしめた。
「俺はいなくなんねえからな。ずっと東堂のそばにいてやる。」
『…ぐすっ…んっ…たか…ちゃん??…わたしっ…』
「東堂!?東堂っ。大丈夫だから。
俺ずっとおまえのそばにいるから。
毎日一緒にねてやる。だから泣くな…っ。」
もうこいつの柔らかいアレが俺にめちゃくちゃ当たってるとかそんなことはどうでも良くて。今はただこれからこいつが安心して寝られる日が来ればいいってそれだけ考えてた。
『たかちゃ…っ。んっ、絶対ずっといなくならない…っ?』
泣きながら俺に聞いてくる東堂。
「ああ、絶対ずっとそばに居る。」
『んっ。…ん。ありがとうたかちゃん…。落ち着いた。』
東堂の涙を拭いて頭を撫でてやった。