第16章 ベゴニア
「え、ねえ引かない…の?」
『だからどうして引くの?
私指輪貰ったの初めてだよ嬉しい!』
正直引かれるかもって少し怖かった。
彼氏でもない男から貰う指輪って重すぎるだろ。
それなのにこんなに嬉しそうに喜んでくれて…
俺の心配なんて吹き飛ばしてくれる東堂の笑顔がジーンときてなんか泣きそう…かも。
『どの指にハマるかなーあ…よい、しょ
あ!ここピッタリだ!わぁ可愛いーっ』
「…っえ」
『ん?見て見て竜ちゃん!
ここの指にね、ピッタリハマったよ!えへへ』
そう言って手の甲を見せる東堂。
右手の薬指にピッタリとはめられた指輪。
「その指につける意味わかっ…てる?」
『身につける指に意味があるの?』
「あー…いやなんでも、ないよ」
そうだよな。そりゃそうだ…。
恋人にもらったりお揃いで買ったものを右手の薬指に身につけるのが一般的に有名だと思う。知っててやってるとしたら…って少し期待したけどそんなわけないよな。
だけどこれで少しでも虫除けになるなら。
「外出る時はその指につけて絶対外さないで」
『うん?』
「俺もそれ…魔除けっつーか。」
『あーなるほど!うん、分かった!
竜ちゃんが守ってくれてるみたいで嬉しい!』
あーだめだもう...可愛すぎて無理...。
魔除けっちゃ魔除け...うん、嘘じゃねえ。
「…東堂」
『…っどうしたの?』
急に抱きしめられて一瞬驚いた表情をしていたけど、すぐに柔らかい笑顔に戻って俺の背中に腕をまわしてくれた。優しく頭を撫でられて、これじゃどっちが年上か分からない。
「はあ、東堂…」
『なあに竜ちゃん?』
「俺のこと…好き?」
あぁ…何言ってんだろ。
こんなこと言って困らせたいわけじゃないのに。
今日は好きが溢れてどうしようもない。
六本木のカリスマが聞いて呆れるぜ。
『大好きだよ、当たり前じゃない…ふふ』
東堂からすればなんてことない応え。
こんなに分かりやすい俺の態度や言葉にだってきっと1ミリも気づいてないんだろうな。純粋で鈍感で目が離せない女の子。
「ん、俺も大好きだよ。
東堂が好き...大好き。」
『甘えんぼうの竜ちゃんですか?
えへへ、いつもと逆だね何か嬉しいっ』
何その笑顔...反則。
あー…くるし。心臓破裂しそ。