第16章 ベゴニア
『はーー、楽しかったあ!』
「それは良かったです」
『竜ちゃんとデートまたしたいなあ』
「え、ほんと?」
『うん、またしてくれる?』
「そんなん当たり前だろ」
今日は本当に楽しかったなあ。
美味しいランチを食べて水族館に連れてきてくれて、竜ちゃんはきっと女の人とこういうデートとか慣れてるんだろうなあ。年上だし、優しくてスマートでかっこよくて。この前は助けてくれたし。きっとすごくモテるんだろうなあ。
竜ちゃんの上着のポケットの中で繋いだ手が暖かくて寒さなんて忘れてしまう。楽しい時間は過ぎるのが早いな。明日はエマたちとクリスマスパーティーかあ!すっごい楽しみだな…!
「なあ、明日って東堂朝早いっけ?」
『ううん、エマたちとの約束は夕方からだよ』
「そっか。寄りたいとこあんだけどいい?」
『うんもちろんよ!』
水族館をあとにしてタクシーに乗った私たちは
某三ツ星ホテルに到着した。
『えと…ここ?』
「あ、うん。ホテルとか…引いた?」
『え?どうして引くの?
私ここのホテル好きだよ!』
「あー…、そっか。良かった」
部屋に案内されて室内に入ると
ベッドのうえにバラの花びらでハートが作られていて、その中心にショッパーがいくつか並んでいた。
『わあすごい!ハートだあ!』
「あーえっと、これ俺からの…その。
クリスマスプレゼントです。」
『え!私今日たくさんもらったのに!?』
「あれはご飯とチケットだろ?
残るもんあげたかったんだよ、あけてみて?」
『あ、待って待って、その前に私から!
私も竜ちゃんに用意してきたの!』
並べてある高級ブランドのショッパーを前に、開けてから渡すのは気が引けたので私が用意したものを先に開けてもらうことにした。助けて貰ったりデートプラン考えてくれたり、お礼も兼ねたクリスマスプレゼント。
「え、うそ。東堂から俺に?」
『うん、あけてみて?』
「あ、うん」
『…どうかな?』
「これ…ピアス?」
『うん、竜ちゃんに似合うかなーって』
「めちゃくちゃ嬉しいわ…」
私なりに一生懸命選んだフープピアスをそう言ってその場で付け替えて見せてくれる竜ちゃん。すごくよく似合ってる。喜んでくれてよかった。