第16章 ベゴニア
『わあ、もう暗くなってきたね』
「んー、そうだな。寒くないか?」
『竜ちゃんの手あったかいから大丈夫っ』
「…っそっか」
急に可愛いこと言うなよ…。
イブに男女で出かけてるなんて周りから見たらカップルに見えてんのかな。どうなんだろ。見えてたら嬉しいな…なんて俺だけしか思ってないよな。
考え事をしているとパァッとイルミネーションの
ライトが一気についた。
『うわああ!すごおい!綺麗!
みた?竜ちゃん見た今の?』
「ふは、うん、見た見たっ」
はしゃぐ東堂が可愛くて思わず俺まで笑ってしまう。ああ楽しいな。族なんてやめて東堂と普通に過ごすのもアリなんじゃねえかなんて考えちまう。
「あのー、すみません…っ」
突然後ろから話しかけられて振り返ると
カメラを持ったカップルがいた
『はいっ』
「あの、写真を撮って欲しくて!」
『あ、もちろんです!
どこでとりますか?』
「あ、ここの前でお願いしたいです」
大きなツリーの前を指定され、そこに並んだカップルに東堂が渡されたカメラを向ける。
『いっきまーす!
ハイ、チーズ!もう1枚!』
「ありがとうございましたっ
宜しければお2人のも撮りましょうか?」
カップルの女の方が俺たちの写真もどうかと言い出す
『わあ、いいんですか!
竜ちゃん撮ってもらおうよ!』
「あ、ああ」
「それじゃあいきますっ
ハイ、チーズ!」
『ありがとうございます!』
「いえいえ、お似合いなお2人だったので!」
それだけ言ってカップルはその場を後にした。
俺たちが…お似合い?そう見えてたのか?
なんとも言えない嬉しい気持ちになった。
『みてみて、竜ちゃんっ
さっき撮ってもらった写真だよ!』
そう言って自分の携帯を見せる東堂。
そこには可愛らしい笑顔の東堂と少し照れたような俺も知らない優しい顔をした自分が写っていた。俺は東堂といるときこんな顔してんだなーと締りのない顔を見て思った。
「よく撮れてんな、あとで送ってよ」
『うんもちろん!』
その写真をこっそり待ち受けにしたことは
俺だけしか知らない。