第16章 ベゴニア
最後に運ばれてきたデザートのいちごタルトを1口頬張り、キラキラの笑顔をおれにむける東堂。喜んでくれて何より。
『お…おいしい…っ!
竜ちゃん!これ美味しい…!!
イチゴあまーい!タルトさくさくでしっとり!』
「はは、よかったな?
東堂が喜んでくれてよかったよ」
『連れてきてくれてありがとう竜ちゃん!
はあ…美味しいなあ〜っ』
「俺の分も食う?」
『え…でもほんとにすごく美味しいんだよ?
竜ちゃんも食べて欲しい!!』
「じゃあ、半分俺食べるからさ
あとの半分もらってよ?」
『いいの??』
「もちろん。そんでまた来ようよ」
『…うん!わあいっ
竜ちゃんだーいすき!ありがとおっ』
もぐもぐとイチゴのタルトを幸せそうに食べる東堂を見ているだけで俺まで幸せな気持ちになる。自分が暴走族ってこと忘れちまうなあ。
会計を済ませて店の外に出て、タクシーを捕まえてから水族館に向かった。今日は昔兄貴達と行ったところではないけど夜はライトアップとかされてすげえ綺麗らしいって噂のところに東堂を連れていくんだ。
「はい、これチケットね」
『これも用意してくれてたの!?
ありがとう竜ちゃんっ!』
「だって俺が誘ったし
今日は俺に全部任せてよ」
『わは〜!竜ちゃんかっこいい!』
「…っこんくらい別に…」
不意打ちかっこいいは心臓に悪いって。
東堂からの『かっこいい』と『大好き』
これはほんとに心臓に悪い…。
『ねえ早く行こうっ!』
無邪気に走り出した東堂は小さな子供みたいで本当に可愛くて守ってやりたくなるようなやつ。俺と付き合ったら東卍になんて置いとけねえな。それでも今みたく笑顔みせてくれっかなあ。
「おい、こけるぞ!」
追いかけて捕まえて小さな手を握った。
『わ!つかまったあ!』
「こら、走ったら危ないだろ?
あと、迷子になるから手を離さないこと」
『はあ〜いっ』
「ん、いい子。」
『ねえイルカショーみたい!』
「よし、見に行くか」
『うんっ』
あれが見たい、ここに行きたい、ワガママだなんて思わない。東堂が楽しんでくれてれば俺はそれで満足で、一緒にいられるだけで幸せなんだ。好きな女にはなんにも適わねぇもんだろ。