第15章 ムスカリ
「んで、東堂は何してたんだ?」
『今日はエマとお出かけしてたよ
マイキーと賢君は送り迎えしてくれたの』
「そっか、楽しかったか?」
『うん、とっても!
圭介くんはコンビニで何買ったの?』
「ペヤング」
『またペヤング!好きだねえ』
「おう!んじゃ俺らも帰っか?」
『うん、そうねっ』
圭介くんが私を抱き上げて後部座席に座らせてからヘルメットを被せてくれる。マイキーもたかちゃんもそうしてくれる。至れり尽くせりだなあと思いながらみんなの優しさが沁みた。
「つかまっとけよー」
『うん!おねがいしまーす!』
「ん、よし、いくぞ」
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『送ってくれてありがとう圭介くんっ』
「いつでも乗せてやるって言ったろ?」
『うん!』
「もー寒いから家入れ、またな」
背向けて家の敷地に歩いていく東堂にバイクにもたれて手を振ると、何かを思い出したように小走りで俺の元へもどってきた。
『圭介くんだいすきっ』
ぎゅっと抱きついてきた東堂に心臓がドクンと跳ねた。久しぶりに聞いたな。抱きしめ返せば鼻を通る香水の香り。…香水?こいつ香水なんてつけてたっけ。あれ…この匂い知ってるな。
「なあ、今日エマと出かけたの六本木?」
『え、圭介くんすごい!なんで分かるの!』
「…灰谷に会ったか?」
『え、どうして分かるの!すごい!』
「あーいや、東堂から灰谷と同じ香水の匂いがしたからもしかしてって思っただけだ。何もされなかったか?大丈夫か?」
『むしろ助けてもらったんだよ!』
「助けてもらった…?何かあったのか!?」
東堂に何かあったら…そう思うと怖くて抱きしめる腕に力が入った。
『あのね、エマと歩いてたら知らない人に話しかけられて遊ぼうよって言われたの。困ってたら蘭ちゃんと竜ちゃんがたまたま通りかかって助けてくれたっ!だから大丈夫だよ圭介くん。』
「ナンパか…」
『なんぱ…エマもそう言ってた!』
「お前可愛すぎっから…気ぃつけろや。」
『ふふ、なにそれ圭介くんっ』
久しぶりに2人きりで話す気がする。
遊びに行くときですら俺らが着いてた方がいんじゃねえかと思えてくる。連れ去られでもしたらどーすんだよ。