第13章 キャンディータフト
side場地
…5:30。
あれ、東堂がいない。
起き上がって部屋の外に出ると瀬川さんに話しかけられた。どうやら早くに目が覚めたから久しぶりに1人で散歩に行ったとか。俺ももう目覚めたし探しに行くか…。
軽く身支度をして瀬川さんに一声かけてから外に出れば門の前で見覚えのある後ろ姿が見覚えのある男に抱きしめられていた。
「ワカくん…?」
え…なんでワカくんといるんだ?
ちょっとまってくれよ…。
だってワカくんは真一郎くんの…っ
「け…いすけ?」
『え、圭介くん?
あれ、もう起きたの?』
ワカくんに抱きしめられたまま振り返ることの出来ない東堂が背中を向けたまま俺に話しかけた。
「東堂…お前起きたら居ねえからびびった。瀬川さんが散歩行ったっつーから探しに行こうと思ったんだけど…ワカくんと会ってたのか?」
もしかしたらワカくんからもう聞いたかもしんねえ。ドクドクと脈打つ心臓と冷や汗が止まらない。だけど今俺がしなきゃいけない事は…ワカくんに精一杯頭を下げた。
しばらくして顔をあげればワカくんが口を開く
「圭介…お前東堂と付き合ってんの?」
「あ…いや違うッスけど…」
なんでそんなこと聞くんだ…?
そうだって言いたいよ俺だって…。
『ワカくん…?』
「ごめん苦しかった?」
昨日は俺の腕の中にいたのに…っ
『あ、ううん違くて』
「ん?」
『なんか香水つけてる…?』
「いや…つけてねえけど…?」
『そ…っか。』
「え、変な匂いする?」
『ううん、すごくいい匂いがするから
香水なら知りたいなって思っただけだよ』
くだらない嫉妬が俺の心にモヤをかける。
「な…んだよそれ…。」
ワカくん顔赤…まじか…。
『ワカくん…。
真一郎くんと会うんじゃなかったの?』
「…っ」
え…ワカくん話してないの。
「あー…そうだな。そうだった。
俺…真ちゃんと仲直りしなきゃな…。
俺にはお前が必要だよって言わないと…っ」
泣きそうな顔で言葉を紡ぐワカくんに胸が苦しい。
『うん、仲直りしておいで。』
ワカくんの優しさに目頭が熱くなる。
分かってる…俺じゃなくて東堂の為だって。
「…真ちゃんのとこいってくる。」
俺に手を振って歩き出したワカくんに俺はただ頭を下げることしかできなかった。