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歩み出せるなら

第5章 宇宙に惹かれて


「この機体・・・。」

「まんま彼の機体だね。」

灰色の見覚えのある機体。
プロヴィデンスにそっくりだ。

「ドラグーンシステムか。キラのフリーダムにもあるんだっけ?」

「うん、ついてるよ。でも設計みるとかなりパイロットに負担がかかりそうな仕様になってるんだ。」

「それに彼女が乗ると?」

イザークでも乗りこなせる気がしない。

「僕でもギリギリな気がするな。」

「そんな危険なものに乗せられるか!」

「でも、頼らざるを得なくなると思うよ。実験台にしてたのはラウ・ル・クルーゼのクローン。彼と同等に力があるパイロットがわんさかいるんじゃないのかな。」

「そんなことはない!」

白い髪を優雅にたなびかせながら、ヒルデがゆっくりと降りてくる。
イザークの手を借りて着地するやいなや講義を始める。

「彼は、死ぬ物狂いでザフトのトップになったのよ!ただクローンだからって強いわけじゃないわ!」

「なら死ぬ物狂いで彼はこの世界を憎んで、破壊して欲しかったってこと?」

「・・・・。あなたにはわからないのね。彼はあなたに止めて欲しかったのよ。人類に絶望していたわけではない」

だから生かされたのだ私は・・・。
愛しているという言葉を信じるなら、どうして愛しい人を残した世界を滅ぼそうとするのだろうか。
本気で滅ぼそうとしていたなら連れていってくれただろう。

「そんなこと、僕にはわからないよ・・。」

「わかっていただけなくても結構。」

イザークは二人の愛の深さを見せつけられたみたいで、胸がちくりと痛む。
キラは悲しそうな顔でヒルデを見る。

「彼が、死ぬ物狂いで努力したからこその力だとして、でももしこれから戦う相手がいたとしたら、強化された人間てことでしょ?」

悲しそうな顔をしたままキラがつぶやく。

「・・・・・・彼の強さは私が知っている。」

「モビルスーツで戦ったことないでしょ?」

「キラ!?」

「ふと思ったんだ。肉弾戦が強かったからモビルスーツもできると勝手に思ってたけど、君が話題に上がったことは一度もない。ということは、君が普通のパイロットの腕前しかないか、乗ったことないかどちらかだよ。」
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