• テキストサイズ

歩み出せるなら

第5章 宇宙に惹かれて


がしゃんと言う音と同時に動画が始まる。

白いパイロットスーツを着ているであろう男の足と、地に濡れたワンピースを着ている女性の腰から下の部分が写っている。
何かの拍子で録画が始まってしまったのだろう。

『ヒルデ、これが最後だ。私は君に何もしてあげることができない。・・・君に愛してると、伝えることしかできない。』

『それだけでいいから、抱きしめていて・・・。」

『この戦いで死ななくても近いうちに私は死ぬ』

『ラウ・・・。なら連れて行って・・・・。最後まで私といて』

『それはできない。ヒルデ・・・。もし私が生きて帰ったら、君が私を殺してくれ』

『いやよ、いや・・・。』

『君を愛すること、それが最後にしてあげられることだ。愛している・・・・。普通の人生を歩むんだ。君は優しい人間だ。だれかと愛を育み、家庭を築くこともできる。』

『そんなものいらない。私の幸せはあなたといることなのだから・・・。』

『ヒルデ・・・。』

抱きしめたのだろう。
二人の影が重なる。

『ラウ!ラウ!!』

彼女を無理やり追い出したらしい。

『やれやれ、離れらないのは私の方なんだがね。』

元隊長の初めて人間味のある声だった。

クルーゼも外へ出るとあとは外の戦闘音が響くだけだった。
そして爆風とともに映像は途切れた。

「ヒルデ・・・。」

初めて告白してきた時、真に迫っていたのは彼を思い出していたからだろう。

誰もが初めから狂っていたわけではない。
狂わされたのだ。

「くそっっっ!!」

机を思いっきり叩く。
どうしてこうも悲劇は止まらないのか。
やはりコーディネーターが作られたからなのか。
しかしそれは自分を否定することになる。

まだまだ知らないだけ苦しんだものはたくさんいるだろう。

どうして悲しみは終わらないのだろう。
/ 37ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp