第5章 宇宙に惹かれて
がしゃんと言う音と同時に動画が始まる。
白いパイロットスーツを着ているであろう男の足と、地に濡れたワンピースを着ている女性の腰から下の部分が写っている。
何かの拍子で録画が始まってしまったのだろう。
『ヒルデ、これが最後だ。私は君に何もしてあげることができない。・・・君に愛してると、伝えることしかできない。』
『それだけでいいから、抱きしめていて・・・。」
『この戦いで死ななくても近いうちに私は死ぬ』
『ラウ・・・。なら連れて行って・・・・。最後まで私といて』
『それはできない。ヒルデ・・・。もし私が生きて帰ったら、君が私を殺してくれ』
『いやよ、いや・・・。』
『君を愛すること、それが最後にしてあげられることだ。愛している・・・・。普通の人生を歩むんだ。君は優しい人間だ。だれかと愛を育み、家庭を築くこともできる。』
『そんなものいらない。私の幸せはあなたといることなのだから・・・。』
『ヒルデ・・・。』
抱きしめたのだろう。
二人の影が重なる。
『ラウ!ラウ!!』
彼女を無理やり追い出したらしい。
『やれやれ、離れらないのは私の方なんだがね。』
元隊長の初めて人間味のある声だった。
クルーゼも外へ出るとあとは外の戦闘音が響くだけだった。
そして爆風とともに映像は途切れた。
「ヒルデ・・・。」
初めて告白してきた時、真に迫っていたのは彼を思い出していたからだろう。
誰もが初めから狂っていたわけではない。
狂わされたのだ。
「くそっっっ!!」
机を思いっきり叩く。
どうしてこうも悲劇は止まらないのか。
やはりコーディネーターが作られたからなのか。
しかしそれは自分を否定することになる。
まだまだ知らないだけ苦しんだものはたくさんいるだろう。
どうして悲しみは終わらないのだろう。