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歩み出せるなら

第5章 宇宙に惹かれて


「どうだった?」

「ああ、このまま調査を続けろと。計画の変更はなしだそうだ。」

「本気かよ?」

「ああ・・・・。」

確かに、戦時中であれば人が死ぬのは当たり前だ。
誰かが死んだからといって作戦を中止することはない。

「ケアをしっかりしておかないとな。」

「ああ、そうだな。」

モビルスーツでの戦闘が多いため、意外と死体を見ることは少ない。
だからこそ、今回のように実際に死人を見て動揺するものも多い。

「おいおい、しっかりしてくれよ?」

「わかっている!あとで全員招集しとけ。」

「へいへい。」

こいつの緊張感のなさはこういった非常時でとても安心するものだと感じた。


「ヒルデ?」

医務室は彼女が暴れる可能性があるので、イザークの部屋、で休んでいる。

「大丈夫か?」

ここ数日彼女は熱を出した。
苦しそうな姿を見ていると変わってやりたくなる。
これ以上彼女が傷つくのを見て居られない。
特に仕事がなければできるだけ彼女のそばにいた。

「このまま戻らず任務を続行させるらしい。」

彼女の手を握る。
熱い。
彼女は素直に甘えてくる
熱で朦朧としている彼女は俺のことを死んだ恋人?だと思っているからだろう。

「愛している。」

弱々しく微笑まれる。
ここまで愛されていたのに、どうしてラウという男は死んでしまったのだろう。

銃に撃たれたせいだろう。
高熱が続いている。
私はナチュラルでコーディネータではない。
いや少しだけいじられているから、多少普通の人より頑丈かもしれない。
毎日イザークが私の世話をしているのを知っている。
まるで愛おしい人を心配するかのように扱ってくれる。
それが心地よくて、熱を言い訳に甘える。

「愛している」

彼がまいかい囁いてくれる言葉。
嘘でもそんなことを言われたら、死ぬのが怖くなってしまう。
私も愛されるのではないかと、錯覚してしまう。

「少し熱が下がったか?」

「はい・・。」

イザークに優しく抱きしめられる。
そのまま彼の胸に身をまかせる。
優しく髪を撫でられる、幸せな時間。
でも、幸せは続かないことを私は知っている。

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