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歩み出せるなら

第1章 椿


「聞いていませんよ!そんなこと!!」

「そんなこと言わないで、今回はあなたとの相性が96パーセントなのよ。こんな相手なかなか見つからないわ。教養もありそうなお嬢さんだったしいいじゃない。」

「俺は!母上が大事な話があるからとわざわざ時間を作ってきたんですよ!!それにほぼ確定ってどういうことですか!?」

着替える時間がなかったのか、イザークはザフトの白服を着たまま、レストランがある高級ホテルのビップ用の個室で言い合いをしていた。

「もう腹をくくりなさい!綺麗なお嬢さんだったし、気にいると思うわ。」

「そういう問題では!」

「じゃあ何?気になっている人でもいるの?」

「別にそういうわけじゃ・・。」

ふと部下のシホを思い出したが、彼女は部下として気に入っているだけだ。

「ならいいじゃない。あなたがずっとこの問題を放置しているからよ。」

「ですが!!」

「あら、もう時間よ、いかなきゃ。」

エザリアはクラッチバックを手に取りルンルンで部屋を出た。

「まったく・・・。」

どうしたものか。
母が連れて着た女性を気に入った試しがない。
自分が女性としてたくましいせいか、正反対の女性を好む。
そう、イザークのタイプとは真反対なのだ。
しかし、ここでドタキャンするほどイザークも子供ではない。

仕方ない。
どうにかして諦めてもらえるよう働きかけてみるか。

わざと態度を悪くしてやろうか、マナーを守らずカトラリーを雑に扱ってみようか、フィンガーボールで水を飲んでみようか。
そんなことを考えながらレストランへ向かう。
しかし、そんなことをしたら大切な何かを失いそうだ。
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