第1章 椿
「しくじるなよ。」
「はい・・・。」
今日はお見合い当日。
ただのお見合いと思ってはいけない。
コーディネーターにとってお見合いとは重要な意味を持つ。
「エザリアがとてもこの結婚に乗り気のようだ。」
理由はそう、遺伝子が遠く子供ができやすい。
名家にとってとても重要なことである。
と言っても、私たち親子はただの成金だ。
家の格なんてものはない。
「いいか、お前にかかっているんだぞ?もっと気を引き締めろ。」
父は焦っている。
権力が欲しいのだ。
一代で財をなし、次は政界に進出したいようだ。
そのためのコネが欲しいと、ずっと方法を模索していた。
「次失敗したらどうなるかわかっているだろうな?」
先ほどから何度も釘を刺してくる。
「わかっています・・・。」
どうして彼についていかなかったのだろう。
どうして連れて行ってくれなかったのだろう。
一つ瞬きをすると、雫が一粒落ちた。