第4章 運命に操られて
「生きたくても生きることができなかったものもいる。突然命を奪われたものだっている。簡単に捨てようとするな!」
ゆっくりとヒルデが上体を起こす。
「幸せに生きて来たのですね」
背中を向けられて彼女の表情を見ることができなかった。
「ヒルデ?」
「一人にしてください・・・。」
黙って彼女に従う。
「変なことは考えるな。」
そう言い残し部屋を後にした。
「た、隊長!?」
「シホ!!」
「どうしてヒルデの部屋から?」
「あ、ああ。さっき取り乱していたから、少し心配でな。」
それだけではないはずだ。
さっき部屋が閉じる隙間から見えたヒルデは薄着であった。
男女の関係なのだろうか。
「ヒルデ・・・。綺麗ですものね・・・。それに比べて私なんか・・。」
シホも整った顔立ちをしている。
しかしキリッとしているせいか、憧れの対象として見られることが多い。
ヒルデのように、いかにも女性らしい、か弱さがない。
「なんだいきなり。綺麗だと思うがな。真が通ってて、美しい。」
そう笑いかけられたら、誤解したくなる。
隊長と結ばれることがあるのかもしれないと。
「隊長・・。」
シホの顔がほころぶ。
イザークも優しく微笑んだ。
そうだ、本来、彼女のような女性が好きなのだ。
自分がしっかりとあって、自分で考え行動できる人物。
そのはずなのに、どうしても頭から彼女が離れない。
「おい、あいつ下手くそすぎね?」
「だよな?やっぱり噂は本当か?」
「御偉いさんと寝たってやつ?」
「それじゃねえよ、でも案外簡単にしてくれるかもな。」
いくらジュール隊といえど、規模がでかければああいったやつが出てくる。
「めんどくせぇな。」
その尻拭いはディアッカがやっている。
後から聞いたが、確かにコネで入ったらしく、しかもイザークの婚約者だという。
しかも、素人に新型機。
わけがわからない。
「どうなってんだ?あー、全く!」
あのコロニーに行って以来、できるだけ彼女を観察するようにしている。
一人で行動していることが多く、特に目立ったことはない。
訓練中ポンコツすぎて目立つだけだ。
「俺、無事にかえっれっかな?」
アークエンジェルの捕虜も経験したことあるが、ここまで先が見えないのは初めてだ。