• テキストサイズ

歩み出せるなら

第4章 運命に操られて


ボルテールに戻った後もずっと放心状態だった。
一応婚約者だ。
彼女を支えてあげようと部屋に行ってみる。

「イザークさ、隊長・・。」

完璧に整えられたかみは降ろされ、まるで下着のようなネグリジェを身にまとっている。
こんな姿でいるところを見られてはまずいと、無意識に彼女の部屋に入る。

その途端、彼女に抱きしめられる。
非常にまずい状況だ。
絶対に誤解される。

「少しだけ・・。こうさせてください。」

その声があまりにも悲痛だったため、何も言わず抱きしめた。


「ブリュンヒルデ・・・・・。ご存知ですか・・・・」

いつの間にかベットに横になり、抱きついてくる彼女の背中を撫でていた。

「ああ。北欧の伝説でよく出てくるなだ。ジークフリートやシグルドといった英雄の恋人?いや妻か?」

「結ばれて、どうなるのですか?」

「確か、夫か死に、後を追って死んだのではなかったか?」

「後を追って死んだ・・・・。」

なぜ無様に生きていたのだろう。
そう、後を追って死ねばよかったのだ。

「ごめんなさい・・・・・・。本当は他に愛した人かいるのです・・。」

そう言った彼女の笑顔を見てイザークはハッとした。
なんども戦場で見た。
死にに行くものの笑顔だ。

「何をする気だ・・・?」

くすくすと楽しそうに笑う。

「彼の元に行きます。」

それが何よりも幸福だと言うように、うっとりした表情だ。

「その彼はどこにいるんだ?」

「さぁ、宇宙のどこかで漂っているのでは?」

「死ぬ気か?」

頰を染め、うつむく。

「はい。」

まるで初恋をしているかのように純粋だ。

「お前が死ぬことを彼は望んでいるのか?」

彼女の瞳が揺れる。

「望んでないんだろ?生きていて欲しいじゃないのか?」

「生きて、どうなるのですか。あなたも、これで私と、私の父から解放されるのだからいいのではないですか?」

当たり前のようにきょとんとして語る。

戦争を通してたくさんの人がなくなった。
大切な仲間も。
こうも簡単に命を投げ出そうとすることに腹がたつ。

 
/ 37ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp