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歩み出せるなら

第3章 産み落とされた願い


ヒルデの目には涙がとめどなく流れていた。

「おい・・・。イザーク・・。」

「ここは戦場なんだ。泣こうが喚こうが命がかかっているんだ。甘やかすな。」

「だがよ・・。こんなの見せられたら誰だって動揺するぜ。」

「僕も、初めてきたときは冷静じゃいられなかったよ・・。」

なぜみんなして庇うのか。


ありがとう、みんなも殺してあげて?

「今の声は?」

キラが辺りを見回す。

「声?そんなんきこえたか?」

「馬鹿なこと言うな。」

「ヒルデ・・・。君も聞こえたよね・・・?」

頷く代わりに瞬きをゆっくりとした。

「どこから聞こえたかわかる?」

ゆっくりと指をさす。
右手奥の扉。

「あそこから、たくさんの想いが聞こえる。」

「まだ助かる・・・?」

「みんな死んでいる。でも、うまく死に切れなかった子たちが苦しんでる・・・・。」

「いける?」

ヒルデは無言で立ち上がる。

「馬鹿か!!そんな状態で行くなんてふざけてる!」

「・・・。おい、通信が入ってるぞ。」

「なんだ?」

「隊長!なんか脱出するがいたんで捕獲しました!!」

シンが必死に状況を説明する。

「失礼します。しかし、脱出艇とみられる船に乗っていた人物は皆死んでいました。」

「何?」

「おそらく、この施設から脱出させる気がなかったのでしょう。空気がぬかれて真空状態でした。」

「そうか、頼りになる。」

優秀なシホを褒める。

「と言うことだ。もうここには誰もいない可能性が高い。ここに艦の3分の1のクルーをおいて資料を回収させプラントに送る。」

「撤退するの・・・?」

「あとは他のものに任せるだけだ。」

「わかった・・。」

「ヒルデ・・・。行くぞ」

ヒルデの背中を優しく押し、来た道を戻る。
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