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歩み出せるなら

第3章 産み落とされた願い


できるから、という理由だけで、クローンからクローンが作られた。
それがレイ・ザ・バレル。
幸福に生きていたのに、デュランダルに惑わされた。

そんな彼の兄弟がたくさんホルマリン漬けにされていた。
量産されたこの子達は人体実験に使われていたのだ。

呼吸がさらに荒くなる。

「おい!ザフトが来てるってよ!!」

「しかし!実験中だぞ!?」

「そんなこと言ってる場合か?早く脱出するぞ!!」

「あ、ああ・・。」

何か実験をしていたらしい。
バタバタと中にいた人物が逃げ始める。
ヒルデはタイミングをはかる。

「おい!!」

少し抑えた怒鳴り声が背後から聞こえる。

「単独で動くな!」

ヒルデは実験室に目が釘付けになっている。
声が届いていないようだ。

「おい!聞いているのか!!」

イザークを無視して、無人になった手術室に入る。

「待て!!」

そこには、麻酔もされず体を開かれた子供が何にもいた。
臓器を取られていたのだろう。

体が震える。

「・・・見るな・・。」

そっとイザークが顔を覆う。

だ、誰か・・・、殺し・・て・・。こ・・ろし・・て・・。

小さい頃に会ったレイと同じ声が頭に響く。
つまり、ラウだ・・・。

「あ・・・。」

震える体で銃を構える。

「ヒルデ・・・?」

「こ、殺してよ!!!!!!!!!!!」

一番奥のベットにいた子供が叫ぶ。

「あ、ああああ!!!あ!!ああああ!!」

ヒルデが叫びながら銃を乱射する。

力が抜けたようにその場に座り込む。
子供は、銃に打たれた衝撃で床に落ちた。

殺した。
私が、ラウを。
殺してしまった。

「落ち着けヒルデ・・・!」

イザークに抱きしめられる。

憎い。
不自由なく暮らして来た物が。
人を殺しったって、自分で選んだ道だろう。
私たちは選ぶことができなかった。
人を殺すしかなかった。
そうしなければ生きられなかった。

「大丈夫だ・・。」

イザークはこの残酷な場所と、銃をうち人を殺したことでヒルデが動揺したと思っている。

私はあなたのように綺麗な世界を知らない。
ここで育ったと聞いたら、この温もりを手放されるだろう。
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