【松野千冬】場地さんの双子の姉とお付き合いしています
第3章 場地さんの双子の姉がモテて困ります
「千冬すぐ喧嘩するし、生傷も絶えないからハラハラするんですよ」
「だろ? おまえの弟も暴走族やってるらしいじゃん。咲桜ちゃんの周り、頭ヤバいやつ多いよね」
「そうなんですよ、頭のヤバいやつ多くて」
咲桜の言葉に気分が落ち込む。別れるのかな、俺たち。……えっ、ぜってぇヤダ。もういっそのこと、今この場所から飛び出て告白現場を修羅場にするか? いやいや、無理だ。俺にそんなことする勇気はねぇし、もしあの男の前で振られたら一生立ち直れねぇ。
「私の彼氏を不良だからって理由でバカにしてくるし」
──なんて思っていた俺に聞こえてきてのは予想外の言葉だった。
「私の弟のこともそう。勝手なイメージだけでヤバいやつだって決めつける」
「……」
「そんな頭のヤバいやつが私の周りには多くて、ホント困っちゃう」
はん、と鼻で笑う咲桜はやっぱり場地さんと同じくらいカッケェ。様子を見ようと顔を覗かせれば対峙している二人の横顔が見えた。腰に手を当てて仁王立ちしている咲桜は、心底相手をバカにしたような顔で男のことを見上げている。
その横顔があまりにもかっこよくて、不意に俺の胸がドキリと高鳴った。
「何も知らないのに私の大事な人たちを悪く言わないで。あんたみたいな人間性クズの男が付き合えるほど、私は安い女じゃないの」
「……黙って聞いていれば、バカにしてんのか!?」
「あら、バカにされてるってことがわかるくらいの脳みそはあったんだ。よかったよかった」
「ちょっと顔がいいからって調子乗りやがって!」
「私のこと顔と胸と暴走族してるやつの姉ってステータスでしか見てないくせに、調子乗ってんのはアンタでしょ! しゃしゃってんじゃないわよ!」
「この女……!」
男が拳を振りかぶったのが見え、反射的に走り出す。咲桜が殴られるところなんか見たくねぇ! 俺が二人のところへたどり着くよりも早く、バチンッ! と派手な音が鳴る。
「な……!」
痛そうに顔を抑えているのは──男の方だった。