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【松野千冬】場地さんの双子の姉とお付き合いしています

第3章 場地さんの双子の姉がモテて困ります


「千冬の部屋はえちえちな本とか置いてあるの?」
「へえっ!?」
「ふはっ、声裏返ってる」
「それは、その……」
「あっやしー」
「まあ……はい」
「素直な子は好きだよ?」

 もぐもぐと口を動かしながらおかしそうに笑う咲桜を見て、思わず恥ずかしさが募る。「見ろ! 咲桜に似てるぞ!」って俺に本を押し付けてきたパーちんくん、マジで恨む。いや、興味なかったのかと言われればあったけど!

「……咲桜は、そういうの興味ないんスか?」
「私?」

 んー。と顎に手を当てて考えている様子に見えるけど、あれはもう答えは決まっている顔だ。俺にはわかる。
 ……俺がそわそわしているの見て楽しんでんだろうなあ。ちぇっ。

「興味あるよ──千冬とだったら」
「……は」
「なに? 千冬は私より、本のがいいの?」
「んなわけないじゃないですか! 俺だって! その、あの」
「……ぷっ、ふふ」
「……俺のこと、からかいましたね」

 むすっと頬を膨らませる俺に「ごめんごめん」と形ばかりの謝罪をする咲桜は、千冬が可愛くてとか言い訳を述べながら俺にすり寄ってきた。俺より咲桜のが可愛いって、ぜってーわかってねぇ。
 咲桜の可愛さは、ズルい。わかってやっている節もある、と思う。

「でも千冬とならってのは本音だよ」
「……はい」
「私たちがもう少し大人になったら、ね?」
「ウス」
「その時は、さ」

 よろしく。はにかむように笑った咲桜を見て、思わず背筋が伸びる。咲桜の未来に当たり前のように俺を存在させてくれている……その事実が嬉しいのと、そう遠くない未来に体を重ねるんだという事が彼女の口から出たことによる喜びの感情があい混ぜになって、心臓がバクバクとうるさい。
 他でもない、俺と咲桜が──。

「千冬ぅ?」

 ドラケンくんにどうしたらいいか訊いとこ。あとマイキーくんにはバレないようにしとこ。じゃねぇとヤバいことになる。俺が。

「咲桜」
「んー?」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

 直角にお辞儀をする俺を笑う咲桜の声が、空き教室に響いていた。



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