【松野千冬】場地さんの双子の姉とお付き合いしています
第3章 場地さんの双子の姉がモテて困ります
「咲桜来ねぇな」
「そうッスね……なんかあったんでしょうか」
昼休み。俺たちはいつも空き教室に三人集まって弁当を食べている──んだけど咲桜が来ない。咲桜の教室に一番近い部屋を使っているからいつもなら一番乗りで来ているのに、今日は昼休みが始まってからすでに五分経っている。
「告白されてたりしてな。アイツあれでけっこーモテるし」
「は……」
──こくはく、ってあの告白? 咲桜が?
目を見開いて固まる俺を見た場地さんは、意外なものでも見たかのように目を瞬かせて首をかしげている。
「どーした?」
「いや……急に不安になって……」
「大丈夫だろ。アイツ、千冬以外の男キョーミねぇし」
「……そうだといいんですけど」
「自信ねェの?」
場地さんの言葉に小さく頷けば隣から盛大なため息が聞こえてきた。本気で呆れられているような視線を向けられ、気分が落ちていくのを感じる。……だってしょうがねぇだろ、どう考えても釣り合ってないのは自分でもわかってんだから。
待ちきれない様子で弁当を食べ始めた場地さんは口をもごもごと動かしながら「あのなァ」と呟いて──。
「自分に自信がねーのは別にいいけどよ、オマエを好きな咲桜のことは信じてやってもいいんじゃねぇの?」
場地さんの言葉にハッとさせられる。そう……だよな、咲桜はいつも「千冬が一番好きだよ」って声に出してくれている。その言葉を俺が信じないでいったい誰が信じるんだよ。
勢いよく立ち上がった俺を見て満足そうに笑った場地さんは、活を入れるように俺のケツを叩いて「行ってこい」と送り出してくれた。
咲桜の同じ学年の人や俺の知り合いに声をかけてわかったのは、三年の男子に呼び出されていた、ということだけ。場地さんが言っていたように、きっと告白されているのだろう。あまり人のいなさそうなところ──屋上や他の空き教室も回って辿り着いた先、体育館裏というベタなところから大好きな彼女の声が聞こえてきた。