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【松野千冬】場地さんの双子の姉とお付き合いしています

第1章 場地さんの双子の姉とお付き合いしています


「どうしたの?」
「いや、なんでもないッス」
「ふーん? そ? じゃあ行こっか!」
「はい!」

 俺が元気よく返事すれば、ニッと笑って頭をわしゃわしゃと撫でてくれる彼女の笑顔は、双子だけあってやはり場地さんを彷彿させるものがある。そっくりかって言われるとそうでもないけど、見たら姉弟だなってすぐわかるくらいには似ていると俺は思う。
 廊下を歩いていると前から分厚いビン底眼鏡をかけ、髪の毛をピッチリと七三にわけているいかにもガリ勉な男が歩いてきた。眼鏡越しではあるが、ぱちっと目が合えば「お」と声を上げるその人に、俺の顔は自然と笑顔になる。

「場地さん!」
「よー、千冬に咲桜」
「千冬ぅ? 私に会ったときより嬉しそうじゃん」
「え!? そんなことないスよ!?」
「あんま千冬を困らせんなよ、咲桜」
「だってさー二人で私のことほったらかすじゃん。毎夜毎夜一緒にナニやってるんだか」
「その言い方は誤解しか生まないッスね!?」
「そりゃー咲桜には言えねェような熱い夜を過ごしてンだよ。なあ? 千冬ぅ」
「た、ただの集会ですから!」

 両隣から場地家に挟まれ、さらには二人に肩から腕を回されれ顔に熱が集まってくるのを自分でも感じる。この状況で赤面しねぇやついる!? いや、いねぇッ! 顔を真っ赤にしながら場地さん、そして咲桜さんと見やればそれはもうニヤニヤニヤニヤと意地の悪い顔をして俺を見ている。
 ああ、もう、誰か助けてくれ……。そう思いながら両手で顔を覆って天を仰いだ俺を見て、二人はケラケラと楽しそう。一生勝てる気がしねぇ……。

「そんなことより、どっか行くのか?」
「うん。千冬と駅前のカフェにね」
「千冬ぅ、デートなら手ぇくらい繋いでやれよ」
「へ!?」
「圭介! そういう茶化しはいらないから!」
「ア? なんでだよ。こないだ家で千冬が全然手ぇ出しいっでえ!」

 俺にとって何が大切なことを言おうとしていた──ような気がする場地さんの言葉は咲桜さんに脇腹をつねられたことにより、途中で遮られてしまった。場地さんにこんなことできるのは咲桜さんくらいだろうな……。
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