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【松野千冬】場地さんの双子の姉とお付き合いしています

第1章 場地さんの双子の姉とお付き合いしています


「千冬ぅ」

 名前を呼ばれてすぐさま振り返る。俺の大好きな場地さんと同じように、少し語尾を伸ばして俺の名前を呼んでくれるのは数ヵ月前、晴れてお付き合いさせていただくことになった──。

「咲桜さん!」

 場地咲桜さん。東京卍會壱番隊隊長、場地圭介の双子の姉にして俺の恋人。場地さんと同じ艶やかな髪を靡かせながらこちらに歩み寄ってくる咲桜さんに、どうしても緊張を隠せないまま勢いよく席から立ち上がると「そんな焦んなくていいから」と可笑しそうに口元を緩めている彼女。口元から覗く八重歯にきゅんとしてしまう。
 今日は咲桜さんに誘われ、駅前にできたカフェへと放課後デートする予定。わざわざ二年の教室まで足を運んでくれた彼女に、申し訳ない気持ちでいっぱいになるが、咲桜さんはそんなこと何も気にしていない様子。俺の教室に入ってきて、あまつさえ席まで迎えに来てくれた。至れり尽くせりとはこのことか。
 さっきからクラスのやつの視線が煩いのは、良くも悪くも目立つ場地圭介の姉だからか、それとも不良である俺の彼女だからか、はたまた──彼女の容姿が整っているからなのか。多分、全部なんだろうけど。

「楽しみすぎて迎えにきちゃった」
「わざわざすんません!」
「いーのいーの。私がしたかったんだから」
「うっす」
「さっき圭介のクラス覗いたんだけど、何回見てもあの髪型と眼鏡ウケる! 千冬もそう思わない?」
「場地さんはどんな姿でもかっけーッス!」
「あはは、千冬に訊いた私がバカだったー」

 決してケバケバしくはない、しかしうっすらとされたメイクは彼女の良さをとても引き立てている。笑うたびに弧を描く──色づいた唇に目がいってしまうのは、健全な男子中学生として仕方がないことだと思う。
 鞄を引っ付かんで咲桜さんの隣まで行くと、さっきまで見下ろされていた目線が同じくらいになって顔が近くなる。……俺がもう少し背ェ高かったら見上げてもらえたのにな。決して背が高くない俺と、女性にしては背が高い彼女。どうしても開かないその差が少しだけもどかしい。
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