【松野千冬】場地さんの双子の姉とお付き合いしています
第2章 場地さんの双子の姉と初めて出会いました
「ね? ダーリン」
「え、ぁ……」
ゆっくりと顔が近づいてきて軽く触れるだけのキスをしたあと、鼻の頭にもキスを落とされる。情熱的な目で俺を見つめながら口の端をぺろりと舐める彼女に、俺まで熱に浮かされたような感覚になる。指先までもが熱くて、息をするのを忘れてしまうくらい胸が苦しくて、心臓が嵐のように暴れまわり、体が壊れてしまいそう。
「咲桜……」
「ん……ちふ、ゆ」
ちゅっちゅっと何度も角度を変えてキスを落とす。煽った咲桜が悪いんだからな、なんて咲桜のせいにしながら自分の欲のままに動く俺はせこいやつだ。嬉しそうに薄く目を細目ながら俺の首に腕を回す咲桜は、本当に俺を煽るのがうまい。……俺の前に付き合ってた人とも、こういうことしてたのかな。咲桜ぐらい素敵な人だ、元カレの一人や二人くらいいてもおかしくない。おかしくないけど…やっぱ嫌だな。
「……ん。千冬ぅ、今日は積極的だね」
唇を離してお互い見つめ合うときも余裕そうな咲桜。俺はこんなにもいっぱいいっぱいだっていうのに。そんな自分が情けなくて、ぎゅっと抱き締めた咲桜の首筋に顔を埋めてぐりぐりと押し付ければ、優しく頭を撫でられた。これじゃまるで小さな子どもが母親に甘えているみたいだ、なんて。
俺はちゃんと咲桜の彼氏としてやっていけてるのだろうか。
「よしよし、どしたー」
「……俺、咲桜の彼氏としてやっていけてますか?」
「うん?」
「咲桜はキスするときも余裕そうだし……俺じゃ子どもっぽくて釣り合ってないんじゃないかって、心ぱ──」
「バカだなー千冬は。圭介よりバカだ」
頭を撫でてくれていた咲桜の手は俺の手を取り、彼女の心臓のところまで俺の手を導いた。柔らかな感触と共に俺の手に伝わってきたのは、ドッドッドッと俺の心臓と同じくらい早鐘を打つ彼女の鼓動。信じられなくてパッと顔を上げれば、少しだけ頬を赤く染め上げた咲桜が八重歯を覗かせながら笑っている。