【松野千冬】場地さんの双子の姉とお付き合いしています
第2章 場地さんの双子の姉と初めて出会いました
先に台所へと向かった場地さんの後ろをついていくと「千冬はお客さんだから座ってて」とエプロンをつけた咲桜さんに椅子を勧められるが、さすがに場地さんと咲桜さんに料理をさせて座っているのは申し訳ない。何かしますと申し出れば少し悩んだ挙げ句、圭介見張っといて。と言われたが、果たしてこれは手伝っていると言えるのだろうか。
とりあえずじゃがいもを潰している場地さんのところへ行き、ボウルをしっかりと掴む。
「あんがとなー千冬ぅ」
「いえ!」
ジュワッと弾ける油の音と、微かに聞こえる咲桜さんの鼻歌になんだか幸せな気持ちになってくる。正直なところ料理はめんどくさいし、やりたいとも思わなかったけど、この二人とやるのは別に嫌じゃねぇ……ってか楽しいな。
親の仇かなんかなのか? ってぐらい、じゃがいもを潰す場地さんに「もうよさそうじゃないスか?」と声をかければ「だな」と満足そうに笑った。
「咲桜ーできたぞー」
「千冬ぅ、そこのキュウリ絞って。圭介はマヨと塩コショウ出してきて味付けて」
「人使い荒ェな」
「馬車馬のように働け」
「言い方ナ」
そんなこと言いながらも、ちゃんと言われた通りに動く場地さん。きっといつもこんな感じで過ごしているんだろうな、なんて俺といるときじゃ見られない場地さんを見られて少し嬉しくなる。なんだかんだお姉さんには優しいんだな、場地さん。家族大事にしてんの、ほんとカッケェ。
「いい感じじゃね?」
「うまそーッス!」
「うまそうじゃなくて味見して美味しくしてー」
「千冬ぅ、あーん」
「場地さん! 自分で食べれますから!」
「ア? あーワリ。咲桜にやる癖でつい」
苦笑いしながら「ほら」と差し出されたスプーンを受けとる。ポテトサラダが乗ったソレを受け取りながら、この姉弟はいつもあーんしてんの? え? あーんしてんの? 俺の思考回路が宇宙へと旅立っていく寸前、咲桜さんに名前を呼ばれてハッと我に返った──。
▽▲▽
「千冬ぅ、どうしたの?」
「え? あ、咲桜さん!」
「なに? またさん付けに戻したの?」