【松野千冬】場地さんの双子の姉とお付き合いしています
第2章 場地さんの双子の姉と初めて出会いました
俺が思考を明後日の方向へ飛ばしている間に場地さんが「おー」と返事をしてくれていた。すんません場地さん、あざす。
「昼休みになるといっつも千冬が来てくれンだよ」
「えー私も一緒に食べたーい」
「来ればいいじゃねーか。なあ、千冬?」
「え? あ、はい!」
「ほんと? 行ってもいい? 二人の邪魔にならない?」
「何の心配だよテメーは」
「私が一年の教室であんたたちと一緒にいたら目立つじゃん。だから一応お伺い立てた」
「オウカガイ? 貝か?」
「食べられないけどね」
「毒あんのか?」
「そーそー」
「いや、場地さん……お伺いってのはそう意味じゃなくてですね」
かくかく然々。お伺いを立てるの意味を場地さんに伝えると「咲桜ッ!」と大きな声で怒り出した。どうやら嘘を教えられたことに腹を立てた様子。フツーならビビって竦み上がってしまうような場地さんの声にも彼女はなんのその。頬杖をつきつつ素知らぬ顔をして場地さんを見上げているのだから大したものだ。あんなキレた声で場地さんに名前呼ばれたら、俺はぜってービクつく自信ある。
「ごめんってー。素直な圭介が可愛くてついつい。ぷぷー」
「ンのアマ……!」
「は? 私に手ぇ出していいと思ってんの? 今日は仕事で母さんいないのよ? あんた、誰が夕飯作ってくれると思ってんの? おん?」
「ぐ……」
「全部煮物にするぞコラ」
「……すんません」
「わかればいいのよーわかればねー」
あの場地さんが言いくるめられている……さすが姉。一人っ子だからわからないけれど、俺にも姉がいたらこんな感じだったのかもしれない。悪態をつきながらも仲のいい二人を見て羨ましくも思う。心の内が少しだけちりりと焼けたような気がした。
「あ、千冬も食べてく? 夕飯」
「えっ!? いや、さすがにそれは申し訳ないッス!」
「いいじゃん、食ってけよ。咲桜の飯まぁまぁ
うまいぞ」
「まぁまぁてなによ。まぁまぁて」
「あ……その、親に訊いてみてもいいですか?」
「もちろん」