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【松野千冬】場地さんの双子の姉とお付き合いしています

第2章 場地さんの双子の姉と初めて出会いました


 よく言えば元気よく、悪く言えば空回って返事をした俺は、バクバクとうるさい心臓を静めるのに忙しくて正直ペヤングどころじゃない。ふぅと小さく息を吐いてからペヤングを口に含んだところで咲桜さんの「あ」という声が聞こえてきた。

「私ら間接キスだね」
「ごふっ!」
「うお! きったね!」
「ごほっごほ!」
「千冬ダイジョーブ? お水持ってきてあげよっか?」
「てーか咲桜が間接キスとか言うからだろ。千冬ビックリしてんじゃねーか」

 場地さん、俺の心を全部代弁しないでください! かっこわりぃから! どことなく気まずくて顔をうつ向かせていると、覗きこむようにして咲桜さんが顔を近づけてきて思わずバッと後ずさる。
 え? なに? この人いつも場地さんといるから、男とのパーソナルスペースバグってんの? そんなことを思いながら目を瞬かせていると、咲桜さんは俺の頭に両手を置いてわしゃわしゃーとヘアセットを掻き乱してきた。されるがままに目をつむっていると満足したのか、頭の上から手のひらが退けられた感触で頭をゆるりと上げる。ボサボサになった髪を手櫛で整えながら、両隣から視線を感じて二人を見やる。男前と美人に囲まれてるとかコレなんて少女漫画だよ。

「な、なんスか」
「ねえ、圭介」
「ああ、そうだな」

 二人は一呼吸置いて──。

「こっちのが似合う!」
「こっちのがいいナ!」

 と息ぴったり。さすが双子。二人して改心の笑顔を披露しては俺の心臓を壊しにかかってくる。ぐっ……かっけぇ。そんな俺の気も知らず「セットしなくていーから楽じゃん」とか「ワックス代も浮きそうだよね!」なんて話を弾ませている。当の本人──俺はちなみに蚊帳の外。

「明日から髪の毛下ろしてこいよ千冬ぅ」
「いいね、それ! 絶対こっちのがモテる!」
「そ、そうスかね?」
「うん、絶対そうよ! 圭介もあんな変な七三眼鏡なんか止めてこの格好でいったらいいのに」
「うっせ」
「あ、二人は一緒にお昼食べてるの?」

 思い出したように訊いた咲桜さんは、また畳の上にごろんとうつ伏せに寝転がって俺たちを見上げている。必然的に上目遣いになっているのは彼女の計算なのか──いや、それは絶対ねぇな。俺、男として見られてねぇみたいだし。
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