【松野千冬】場地さんの双子の姉とお付き合いしています
第2章 場地さんの双子の姉と初めて出会いました
咲桜と初めて出会ったのは、場地さんと出会った三日後のことだった。場地さんに惚れ込んでペット宜しく「場地さん場地さん」とその日も場地さんの後ろをついて回っていた俺は、場地さんに俺ん家寄ってく? と言われ、二つ返事で「はい!」と頷いて俺と同じ団地の五階まで上がっていったのを今でも鮮明に思い出せる。
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「今日オフクロ仕事でいねーんだワ」
そう言いながらガチャガチャと鍵を開けた場地さんに「ペヤング作るから部屋行ってろ」と言われ、先日訪れた場地さんの部屋に入る──と俺らの中学の制服を着た女の人が、四肢を投げ出して畳で寝ていた。
は? 場地さん、オフクロさんいないって言ってたけど、オフクロさんじゃない人がいますよ!? スカートからチラリと見える下着に、ごくりと喉を鳴らす。え? 俺入っていいのかこれ。どうしていいかわからず突っ立っていると、後ろから場地さんに名前を呼ばれて振り返る。
「ンなとこで何してんだよ」
「いや……女の人が寝てて……」
「ア? チッ、咲桜! 起きろ! ンなとこで寝んな!」
「……んあー?」
咲桜と呼ばれた人の瞼がゆっくりと開き、ぼーっとした顔で場地さんと俺を順番に見たかと思うと、大きく欠伸をしてから不満そうな顔で場地さんを睨み付けた。彼女かと思ったけど、場地さんの家族っぽいな……顔も似ているし、なんといってもこの八重歯は間違いなく場地さんの家族だ。間違いねぇ。
「あー……圭介じゃん、おかえりー」
「ただいま。つかパンツ見えてんぞ」
「マジかぁ……っていうかさ、友だち呼ぶなら先に言ってよ」
「んなもんイチイチ言うかよ」
「ここ、私の部屋でもあるんだからね。わかってる?」
「へーへー」
「それにしてもその子の頭、ニワトリみたいね」
ニワトリ……俺のこと、だよな。気だるそうに頭を掻きながら体を起こした咲桜さんは、衣装ケースの中からジャージの下を取り出すとスカートの下に履いてまた畳の上に寝転んだ。
俺らのことを考えて少し端に寄ってくれたのか、先程よりも小さく丸まって寝転ぶ姿はなんだか猫のよう。