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【松野千冬】場地さんの双子の姉とお付き合いしています

第1章 場地さんの双子の姉とお付き合いしています


 あ"ー、この顔他の誰にも見せたくねぇ。欲のままにそっと唇を重ねれば、俺を受け入れてくれる咲桜。俺は世界一幸せ者だ。

「好き」
「知ってる」
「大好き」
「知ってる」
「咲桜は?」
「……チョーシ乗ってんじゃないわよ、千冬ぅ」
「え? あ! すんませ──」

 しまった、と眉根を下げた瞬間。制服のネクタイを思い切り引っ張られて前のめりになる。──と同時に噛みつくようなキスをされた。

「え? あ? は?」

 思考回路が追い付かなくて壊れたロボットみたいなことしか言えない俺を見て、口の端をニッと上げて満足げに笑う咲桜。八重歯がちょっと当たって痛かったけど、その乱暴なキスにさえも喜んでしまう俺がいて──。
 キス……された。そう理解すれば顔が一気に熱くなり、口を金魚みたいにはくはくと動かすことしかできない。

「ふふん、やられっぱなしの私じゃないんだから」
「……うす」
「さ、私ん家行こ。さすがにこの格好じゃカフェ行けないし、手当てもしないとね」
「今度! 今度、埋め合わせさせてください!」
「当たり前でしょー。無理矢理にでも付き合わせるからね!」
「何よりも優先していきます!」
「あ、そうだ」

 言い忘れてた。と誰に言うでもなく呟いた彼女は俺の耳元で──。

「最高にかっこよかったよ」

 そう囁いて先ほど男に殴られた方の頬をべろりと舐めた。





(おまけ)


「ただいまー」
「お邪魔します」
「ア? デートどうし──は? オマエら何でんなボコボコなんだよ」
「忠犬千冬が狂犬千冬になっちゃって」
「場地さん! 場地さんの大事なお姉さん傷つけてすんません!」
「あー、そんくらい唾つけときゃ治るだろ。気にするな」
「……」
「……」
「は? なんで赤くなってンだよオマエら。あ、千冬ぅ。ちゃんと手ぇ繋いだか?」
「あ! はい! キスもしました!」
「ぶはっ! よかったなー! 咲桜ー!」
「圭介に報告してんじゃないわよ千冬ぅぅぅ!」
「え? え?」
「ひー! ウケんだけど!」
「圭介ブッ飛ばす!」



(終)
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