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ジェラシーのその後で

第1章 カゾク×ト×ワタシ



「わ…っ!!…っっ!!」
「!」

ネルルはイルミに乗りかかるようにして倒れた。
衝撃でぎゅっと閉じていた目を開けると
息がかかるほど接近した、無表情な兄と目が合った。
「!!!?ご、ごめんなさ…
「じっとしててくれない?」
被せるように言うと、ネルルを体に乗せたまま上半身だけを起こす。

「動かないでね。」
「!?」至近距離にいた兄に胸がドキッとするが、その感情がなんなのかと考える前に、気づくと、暴れ出さないように、兄の右手が自分の両手首を掴んでいた。

いつのまに…!。

パシャ…ッ

「〜〜〜っっ!!!! ツっ………!!」
左手に小瓶を持ち替え、直接傷に中の液体をかけられた。
キンとした深い痛みが全身拡がり身を捩る。

涙目になりながら落ち着こうと荒く深く、息をする。
「もうこれで大丈夫だと思うから。」とネルルの両手首を解放してガーゼを当てがう。

「はぁ…はぁ…お兄ちゃん……」

息を吐きながら、手当てしてくれる兄の所作を見つめる。 
「もう大丈夫。」

「!!!」

伸びてきた黒髪で伏せた目が少し隠れているが、いつもより優しく見えた。
普段から何を考えているのかわからない、兄の漆黒の光を映さない瞳が、自分の傷ついた足を見つめ、白く長い手で手当てしてくれている。

…何故か胸と頬が熱くなる。
どきんどきんと、大きく波打つ。
全てが熱くて、ぎゅっとくるしくて、恥ずかしくて、今すぐ顔を晒してしまいたくなる。
顔を横に背けたいのに、どうしても、兄の黒い瞳と白い手先をぼぅっと交互に眺めてしまう。

包帯を巻かれる瞬間、足先に兄の手が触れた
「…っ!」
ぴくんっと、無意識に足が少し跳ねてしまった
「なに?これも痛い?」
と、包帯を巻きながら瞳だけを自分に向けてくる。

「うっ、ううん…!もう大丈夫だから…!
ありがとう……お、お兄ちゃん…」

「うん。……おしまい。じゃ、これ返してくるね。痛みはなくなったと思うけど、立てはしないと思うからそこで待ってて。」

兄はさっさと治療道具を戻しに行った。

その背中を見つめる。


今まで散々漫画や映画、小説で架空の人物の“恋愛”を見て、“恋愛”を感じたつもりでいた。
しかし自分自身が、実の兄に、その“恋愛”の華の芽を出してしまったということは、まだわからないままでいた。
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