第1章 カゾク×ト×ワタシ
イルミが戻ってきた。
「あれ?ゴトーは?」
「戻ったよ。ほら、早く出して。おそくなる。」
「お兄ちゃんがしてくれるの?」
「うん。ゴトー達は手当ても丁寧すぎるんだよね。甘やかしすぎ。」
ネルルの足を、自分の膝に置きながら薬を準備する。
「ありがと……」
「ちょっと滲みると思うけど、我慢しててね。」
「え、滲みるのやだ…っ!」バッと足を引っ込めるが、イルミの大きな足に素早く掴まれた。
「遅くなって父さん達に叱られてもいいなら、暴れてもいいけど」
「そ、それもやだぁ…っ。
……ッッ!!!んんっ!いたい!!」
ギュッ、と、薬がよく染み込んだ綿を足首に押し付けられた。
身体が大きく跳ね上がる。
ゾルディック家が訓練で扱っている毒は世界中から集めた得体の知れない強力な物だ。
それを打ち消す薬も毒なのでは?と、言いたくなるくらい強力なものだった。
しかも、なかなか痛みが引かない。ずっとじゅくじゅくと滲みているのだ。
毒が体に染み込んでいる時よりも痛みが強いとは…。
「お兄ちゃんいたいよっ!もういいから!!じぶんでやるー!」
ぽかぽかとイルミの肩を叩きながら言えば
「余計できないから俺がやってあげてるんだけど。」
尚も綿を押し当ててくる。
「血、なかなか止まらないね。あの毒だと、直接つけちゃった方がいいかも」
空いた片手だけを使い、キュポンッと小瓶の蓋を開ける。
瞬間、ネルルの顔がひきつり体に力が入る。
「お、お兄ちゃんそれだけはやだ…!今より絶対痛いもん!ほんとにやだ…!」
やめてやめて、自分でやる!
と小瓶を持ったイルミの右手を掴もうとベンチから立ち上がろうとするが、自分の右足は兄の膝に置かれたままだ。
当然だがバランスを崩す。