第2章 ワタシ×ト×奇術師
ガチャリ
「っっはぁーー…」
イルミに言われた通り、用意されていた部屋へ入ると同時におおきく息を吐いた。
ヒソカに嘘つかれてたから怒ってたのかな。
怖かった…あんなに怒ってるお兄ちゃん、ひさびさにみた。
殺気で遠くのもの壊しちゃうなんて。怖すぎでしょ…。
「んっしょっと…」
部屋の大きなベットに仰向けになる。
(ん〜でもやっぱり…私と合わせたくなかったからかな。恥ずかしい存在だから…ヒソカにも教えなかったのかもな…)
帰ってきたらとりあえず謝らなきゃ。
時刻はまもなく正午を回る。
早朝から出てきたので午後が長く感じそうだ。
兄はいつ頃戻ってくるのだろうか。
ヒソカに誘われたデートの予定は白紙になったのか。そんなことをぼんやりと考えながら、眠りに落ちてしまった。
「ん〜…」
何時間たったのだろうか。まだ日は明るい。目を覚まして伸びをする。ベッドの脇に置いたスマートフォンを取ろうと身を捩るとソファに座る兄がいた。
「わ!!お兄ちゃん戻ってきてたの!?びっくりした…」
「うん。」
「気づかなかった…。いまは…15時かぁ。用事終わったの?」
「うん。」
「………。」
(どうしよ…めっちゃ機嫌悪い…。)
「お兄ちゃん…」ベッドから出て兄が座る隣へ自分もちょこんと座る。
「さっきはごめんなさい…」
「え?なにに謝ってるの?」
「ヒソカと会ってたから怒ってるんでしょ…?それにヒソカ、嘘ついてたし…」
「わかってたんだ。」
「う、うん…」
「わざわざ細工してまでお前に会いに行くなんてね。」
すこぶる機嫌が悪い。テレビはついていないのに、肘をつきながらテレビの画面をソファからずっと見ている。
普段から寡黙な兄だが、機嫌が悪くなると、ことが収まるまで目を合わせてくれなくなる。
「私の事…知られたくなかったんだよね…。」
気にしていたことを呟いた。
「え?」
「私がこんなんだから、恥ずかしいから、知られたくなかったんじゃないの?」
「うーん。そうなのか。そう思ってるなら、それでいいよ。案外、間違いではないしね」
やっぱり…。
「…っ。うん…」
「それでさ、今度あいつと出かけるんだって?」
「…!!」
「2時間で帰って来れるなら行ってきていいよ。
ただし、地元で。」
「い、いっていいの?」