第1章 爆豪くんがちょっと苦手。
お風呂から上がったあと、自分の食事を軽く用意して、共同フロアのテレビを見ながら、轟くんの帰りを待った。
お風呂等で入れ代わり立ち代わりのクラスメイト達は、映るバラエティー番組を観て楽しんでいるけれど、そんな気にもなれなくて少ししんどい。
気付かないうちにため息は増えて、近くにいた上鳴くんが、心配そうに口を開いた。
「観月、大丈夫か?」
「……うん。おなかはすいたけどね」
「轟も少しくらい早く帰ってきてくれてもいいのによー」
「……まぁ、頑張ってるんだし」
轟くん以外にも、トレーニングに出ているクラスメイトはいる。
訓練施設は頻繁に借りられる場所でもないから、借りられたその日に頑張りたい気持ちも分かる。
私だってそういう時は、ギリギリまでトレーニングに励むもの。
言ってしまえば、私が取り付けた約束だし、破ってもそんなに問題は無い気もする。
朝から晩まで同じ環境で過ごすわけだから、また明日の約束だって出来るわけだ。
「待ちたい。って思っちゃうんだよね」
「そんなもんかぁ」
「そんなもんだよ」
俺も彼女が出来たら分かるかな。
と上鳴くんが笑ったのに、曖昧に微笑み返す。
そして上鳴くんが何かを言いかけた時、寮のドアが開いて、轟くんが帰ってきた。
「あ! おかえり。轟くん」
「あぁ。ただいま」
「夕飯何にする? 私準備しておくから、部屋に荷物置いてきなよ」
「悪ぃ、助かる。……蕎麦、頼んでもいいか?」
「うん。温かくないものだよね」
「あぁ。……なぁ、シャワー浴びてきてもいいか?」
「おい、退けやクソが」
轟くんに返事をしようとしたその時、轟くんの後ろから、爆豪くんが現れる。
私と轟くんが入口付近で話し込んでしまったから、爆豪くんは苛立ったのだ。
「ご、ごめん爆豪くん。……じゃあ轟くん、後でね」
「分かった」
爆豪くんから逃げるようにして、私はキッチンへと向かう。
轟くんともう少し話したかったけれど、夕飯を一緒に食べられるんだし。
気持ちを切り替え、食材を取り出したその時、何故か爆豪くんが私の背後に立っていた。