第1章 爆豪くんがちょっと苦手。
午後の授業はあっという間に過ぎて、轟くんは放課後も、足早に教室を去っていった。
本当にトレーニングに向かったのかな……という思いを振り切って、皆と一緒に寮まで帰る。
「そうや! 朔良ちゃん、この後空いとる?」
寮に着くなり、何かを思い出したお茶子ちゃんに手を握られ、今日の予定を思い出してみる。
「轟くんと夕飯を食べる約束してるけど……それまでなら!」
「直ぐに終わるはずだわ。リューキュウから受け取った資料を確認したいだけなの」
「なるほど、凄く助かる」
リューキュウから貰った資料とは、恐らく再開するインターンについて。
私は仮免取得後すぐのインターンには参加していなかったけれど、お茶子ちゃんと梅雨ちゃんに誘われ、リューキュウ事務所に合流することになったのだ。
そしてまずはそれぞれ部屋に戻り、着替えて共同フロアに集合する。
集中したい時は誰かの部屋に集まることもあるけれど、今回はちょっとした打ち合わせみたいなもの。
それから私が、轟くんの帰りが直ぐに分かる場所がいいと思ったから、二人に頼んで共同フロアに集まった。
インターンに関してリューキュウから貰った資料は、好きな食べ物や苦手な食べ物などを記入する簡単なものから、個性や戦い方、ヒーローとして活動する上での注意事項など。
「直ぐに終わるはず」という梅雨ちゃんの言葉通り、一時間足らずで確認は終わり、夕飯の時間になって、梅雨ちゃんとお茶子ちゃんは夕飯の準備を始めた。
しかし私は轟くんと約束をしていたから、その輪に混ざることも出来なくて、手持ち無沙汰になった。
「ねぇ梅雨ちゃん。私先にお風呂行くから、轟くんが来たら教えてくれない?」
「ケロケロっ、分かったわ」
「ありがとう! よろしくね」
なんとなく、轟くんはまだ戻らない気がしたから、私は先にお風呂を済ませることに決めた。
そして梅雨ちゃんに声をかけ、お風呂に向かう。
気持ちをリラックスさせるために、ゆっくり湯船に浸かったけれど、私がお風呂を済ませた後でも、轟くんはまだ帰って来ていなかった。