第1章 爆豪くんがちょっと苦手。
「んだよ」
「いや……特に何も」
爆豪くんは、辛いと思う?
なんて話題を振ることが出来ずに、ふい。と顔を逸らせば、爆豪くんは小さく舌打ちをする。
私はそれに気付かなかったフリをしてヤオモモの方を見て笑い、「とりあえず食べてみようよ」と言ってみる。
ヤオモモは少し迷ったあと、「モノは試しですよね」と呟いて、私のスプーンを受け取った。
しかしやっぱり辛かったのか、ヤオモモは持ってきていた水を一気に飲み干し、目をうるませて驚いていた。
「……ごめん、ヤオモモ」
「い、いえ。大丈夫ですわ……食べると決めたのは私ですから」
そんなに辛いかなぁ。と思いながら一口。
やっぱり私にとってはそれほど辛いものでもないし、また盗み見た爆豪くんも、何食わぬ顔で食事していた。
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ヤオモモと一緒に購買に向かい、お詫びにちょっとしたお菓子を購入して、それから教室に戻る。
授業開始まで、残り約10分。
教室には殆どが揃っているけれど、まだ席に着いている人は少なく、ワイワイと賑やかな雰囲気だった。
「あ! お菓子買ってきたん?」
「うん。良かったらお茶子ちゃんと梅雨ちゃんもどうぞ」
「ありがとう!」
「嬉しいわ、ケロケロっ」
出入口付近にいたお茶子ちゃんと梅雨ちゃんにお菓子を分けて、雑談をしながら教室を見渡す。
轟くんは、まだ教室に帰ってきていない。
楽しいお喋りの時間でも、それだけで不安になるけれど、轟くんに迷惑はかけたくなかった。
「皆! 予鈴が鳴ったぞ! 席に着いて授業に備えよう!」
少しして予鈴が鳴り、飯田くんの声掛けにより皆が席に着く。
賑やかな教室が段々静かになって、座席の前後左右だけで各々が話し始めた。
「観月さん、ちょっといいかな」
「どうしたの?」
後ろの席の緑谷くんに声をかけられ、振り返って話をする。
五時間目の復習で、よく分からない問題があるという緑谷くんと、前回のプリントを振り返っていると、後方のドアが開いて轟くんが帰ってきた。
それと同時に、授業開始のチャイムが鳴った。