第1章 爆豪くんがちょっと苦手。
「ヤオモモ、爆豪くん、隣……いいかな」
「もちろんですわ!」
「…………」
ほんの少しだけ考えた後、難しく考えるのを直ぐにやめ、私はヤオモモと爆豪くんの隣に食器を置いた。
向かいには三奈ちゃんもいるし、爆豪くんと話さなきゃいいだけ。それに、下手に遠くの席に座る方が、何か思われるかもしれない。
爆豪くんの無言を肯定として受け取り、私は席に着いた。
私が爆豪くんの事が苦手なこと、多分、殆どの人が知らないと思う。
私は基本的に、轟くんと後ろの席の緑谷くん以外の男子と喋らないから、苦手とかじゃなくてそんなものだと思われている気がする。
だから、周りに気を使われるのが嫌で言ってない。
苦手なだけで、何かされたわけでもないもんね。
「ヤオモモは何を頼んだの?」
「私はBランチですわ。麗日さんが非常に楽しみにしてらしたので、つい気になってしまいましたの」
「あー……分かる。お茶子ちゃんの白米愛、凄いもんね」
「えぇ。主菜もとても美味しいですわ。宜しければ、一口頂きますか?」
「え! いいの?」
「もちろんですわ」
ぷりぷりと笑ったヤオモモは、一口分の主菜を分けてくれ、私は有難く頂戴する。
優しい口当たりと、口いっぱいに広がる香ばしい味付けにウットリしていると、ヤオモモは私の四川麻婆が気になっているらしかった。
「良かったら、食べてみる?」
「き、気になりますが、非常に赤い……ですので……」
「大丈夫。見た目ほど辛くないよ」
「観月さんと爆豪さんの辛くないは信用するなと、上鳴さんに言われましたわ……」
「え、そんなこと」
「あたしもそれ思うよ、ヤオモモ」
向かいに座っていた三奈ちゃんが反応して、そんな事ないと思いながら、ちょっとだけ横を盗み見る。
爆豪くんも、普通に食べてるんだよな。
そう思っていると、顔を上げた爆豪くんとバッチリ目があった。