第1章 爆豪くんがちょっと苦手。
やっぱりな。とは思うけど、声をかけに行くことはしない。
列が乱れるっていうよりも、別に爆豪くんと仲良くないから行かない。
クラスメイトなんだし、仲良くした方がいいのかもしれないけれど、爆豪くんだけは正直苦手。
いつも怒っているような所が、乱暴そうな所が本当に怖い。
瀬呂くんや切島くんが、「あーみえて繊細なんだぜ」ってずっと前に言ってたけれど、よく分からないし。
席が前後でも、その程度の付き合いしかないのだ。
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しばらくして、ランチラッシュ先生から料理を受け取った私は、既に席に着いているお茶子ちゃんたちの元に向かった。
いつも混んでいる食堂。
一緒に来てもバラバラに座ることもたまにあるのだが、今日はタイミングが良かったのか、クラスのほぼ全員が、同じテーブルに座れるくらいの座席が確保出来たみたいだった。
居ないのは、教室で食べる派らしい青山くんと、先約があると言っていた轟くんくらい。
寮で朝晩を共にするのだから、こんなに仲良しじゃなくてもいい気もするけれど、二人だけ居ないというのは少し寂しい。
それが、轟くんだから尚更。
「どこ座ればいい?」
「どこも似たようなもんだろー」
「観月、オイラの隣」
「それだけはやだ」
「峰田の隣は俺が座っから」
キョロキョロと辺りを見渡した私に峰田くんが声をかけ、それを遮るように口を開けば、気を利かせた瀬呂くんが峰田くんの隣に座った。
峰田くんの反対隣には、既に座っていた常闇くん、正面には口田くん。これなら女子も安心だ。
とはいえ、懸念要素は峰田くんだけじゃなくて、どこに座るかということがある。
皆仲良しだし、座席決めだけで喧嘩しそうな緑谷くんと爆豪くんは、それぞれ離れた所で座っているから、基本的な問題は無い。
だからこそ、迷う。
空いている残りの席は、ヤオモモと爆豪くんの間か、女子と離れた席の二択だった。