第3章 爆豪くんと初デート(?)
そんなモヤモヤも、激辛料理店にやってきたら吹き飛んでしまった。
というのも、メニューに表示された写真のどれもこれもが、とんでもなく辛そうなのだ。
「わっ、これめちゃくちゃ美味しそう! ……あ、でもこっちもいいな……」
「好きなのを頼めばいいじゃねーか」
「どれも好きなんだよね……爆豪くんは? 決まったの?」
「四川麻婆」
「そ、そっか」
最後まで言い切ることも無く返ってきた言葉に、私はリアクションに困ってしまう。
ということは爆豪くん、私が決めるのをずっと待ってるって事だよね。
それならそれ以上待たせないように、急いで選ばなきゃと思うけれど、そんな思考が生まれると、余計に迷ってしまうもの。
どうしよう。
私も四川麻婆気になってたんだけど。
爆豪くんに「一口ちょうだい」なんて言える気がしないし、かと言って同じものを頼むのは違う気がする。
爆豪くん、そういうのあんまり好きじゃないと思うし。
でも、
「おい」
「ひゃい!」
ついに痺れを切らしたのかな。
ビビりながらもメニューから顔を上げ、爆豪くんの表情を覗き見る。
「何で迷ってんだよ」
「え、えーっと……四川麻婆と、坦々麺かな……」
とりあえず爆豪くんは、怒っているわけではないらしい。
真面目な顔つきで言われた質問に、私も真面目に返事をすれば、爆豪くんは静かになって、考えるように手を顔に当てた。
「なら」
「ん?」
「一口やるよ」
「……え」
「シェアして食えばいいじゃねーか」
「…………あ、ありがとう」
それなら坦々麺で。
と、私がオーダーを決めて、爆豪くんが店員さんを呼び注文をする。
結構爆豪くんって、関わってみたらイメージと違うんだよな。
そう思ったその瞬間、爆豪くんの笑顔を思い出してしまって、私は撃沈する羽目になった。