第3章 爆豪くんと初デート(?)
「……っえ、」
「あ?」
ドアが閉まりそうになって、私たちは慌ててホームに降り立つ。
目的地に到着した人々が、私たちに目もくれずに改札口へと向かっていく中、私は呆然と、爆豪くんを見つめてしまう。
「な、なんでもない!」
もしかして、爆豪くんは。
なんて疑惑が生まれてしまったのを、一度自分の中に引っ込めた。
「行こ! あっちだよね!」
さっきまで、繋がれるのが嫌だった手を引っ張って、爆豪くんの顔を見ないように歩き出す。
爆豪くんは、私の事が好きなのかもしれない。
なんてのは思い上がりであってほしい。
激辛料理店に誘われたとも、私がクラス屈指の激辛好きだからというだけだし、妙に距離感が近いのも、爆豪くん自体がそういう人なんだ。
さっき顔が赤く見えたのも、きっと私の気のせい。
そうじゃないと、いけないの。
「…………おー」
だって私は、轟くんの彼女なんだ。
そう思い出して、爆豪くんの手を振り払おうとしたその時、爆豪くんが強めに私の手を握り返す。
そして赤らめた表情を隠すことも無く、いたずらっぽくも少し優しい笑顔を、爆豪くんが私に向けた。
「っ!」
ダメだ、という感情が、最後の警告と言わんばかりに心臓の音を速くする。
これから私は、どうするのが正解なんだろう。