第1章 爆豪くんがちょっと苦手。
大抵の日は、早く終わらないかと思う四時間目。今日はその時間が、終わって欲しくなかった。
だって彼氏の轟くんが、別の誰かとお昼を過ごすから。
その「誰か」が「誰か」なんて、私には分からない。
緑谷くんや飯田くんらと一緒だったり、先生に呼び出されたりしているなら、きっとそう言ってくれるんじゃないかと思う。
だから今日は、私の知らない誰かと一緒なんじゃないか。……って、悪い方向に考えちゃうのだ。
そしてそれが、女の子だったら。
その上、二人きりだったら?
考えれば考えるほどやもやしちゃって、授業の内容なんてこれっぽちも頭に入らない。
夕飯の前に、先約が何だったのか聞いてみようか。でも、今更聞いて嫌がられたらどうしよう。
ただでさえ面倒な女だと思われてそうなのに、そんな____
「……おい」
「…………」
「おいっつっとんだろクソが! 舐めてんのかテメェは!!!」
「ひやぁっ!」
ボム! と爆発音が鳴って、私はびくりと身体を震わせる。
目の前の座席の爆豪くんが、どうしたことか爆破をしたのだ。
「授業中にキレるな爆豪!」
「ちっ」
「観月も授業中だ。ぼーっとするな!」
「す、すみません!」
事態が良く分からないまま、とりあえず相澤先生に返事をする。
それからようやく爆豪くんの方を見ると、爆豪くんはプリントを握りしめ、真っ赤な三白眼をこちらに向けていた。
そう。爆豪くんは、私にプリントを回そうとしていたのだ。
けれど私が気付かないから、叫ぶと同時に軽く爆破をしたのだろう。
「……ごめんね、爆豪くん」
つまり私がぼーっとしていなければ、爆豪くんが怒ることもなかったし、爆豪くんは相澤先生に怒られることもなかったのだが。
プリントを受け取った後で、内心悪態づく。
別に、爆破までしなくてもいいじゃない。