第3章 爆豪くんと初デート(?)
駅前には既に、爆豪くんがやってきていた。
そんな爆豪くんは、寮の中で見るようなシンプルな服装ではなく、ちゃんとオシャレな服を着て、静かに佇んでいる。
爆豪くんの事を知らなければ、有名人かと勘違いしてしまうのでは無いか。
そう思うほど、爆豪くんのスタイルはかっこよくみえて、私は話しかけるのを躊躇した。
「ね、あれ雄英の爆豪くんじゃない? 誰かと待ち合わせかな」
「こうやってみたら結構かっこいいじゃん」
「どうする? 話しかける?」
「えー、話しかけたら怒られそうじゃない?」
ちょうどすれ違った女の子の集団は、黄色い歓声をあげながらそんな話をしていた。
辺りを見渡してみれば、他の行き交う人たちも、爆豪くんに注目している。
それでも爆豪くんは、ちっともどうじない。
やっぱり、別世界の人みたいだし、誘いになんか乗らなきゃ良かった。
「……でもなぁ」
「…………何が、でもなんだよ」
「ひっ!」
断るのは失礼だよね。と思いながらも、一度出直そうかと爆豪くんに背を向けた瞬間、ひっくい声が私の耳を掠める。
ギギギギギ、とぎこちない音が立ちそうなほど不自然に振り返れば、真後ろで爆豪くんが、不機嫌そうな顔を浮かべていた。
「着いたなら一声かけろや」
「ご、ごめんなさい」
「っち、行くぞ」
私の言い訳を聞き入れることなく、爆豪くんは私の腕を掴んで歩き出す。
さっきすれ違った女の子の集団が、意外そうにこちらをみていた。
「あの子も確か雄英だよね」
「なんで待ち合わせしてたんだろ」
「でもなんだか」
お似合いだね。
そんな呟きが聞こえてきた。