第3章 爆豪くんと初デート(?)
「…………はぁ」
爆豪くんが、私の耳元でわざとらしくため息をつく。
いつもなら、呆れられてしまったと身を縮こませてしまう所だけれど、今日はそれ以上に、擽ったさと心拍数にやられてしまいそうだった。
変だな。
私、轟くんの事が好きなのに。
最近ずっと、爆豪くんにドキドキしてばかりだ。
なんて一人考えていれば、爆豪くんが「おい」と一言、私に声をかけてくる。
「なっ、何?」
「行くだろ、激辛」
「二人で?」
「ア? 他に誰がいんだよ」
「えっ……えぇ…………」
私たちの激辛レベルについてこられる人は、恐らくクラスにはいないと思う。
でも、爆豪くんと二人なんて。
それも今日みたく授業の打ち合わせじゃなくて、ただご飯を食べに行くなんて、そんなの。
浮気とも、言えるんじゃないかな。
チクリと、胸が痛む。
私の知らないところで、轟くんが何をしているかも分からないし、それが浮気に等しいことかもしれないと疑ったことが無いわけじゃない。
だからといって私が、浮気に近しい行動を取るのは違うと思う。
轟くんがそうしてるなら私も。
なんて言ってしまえば、それこそ最低だし、もう轟くんの傍には居られなくなってしまう。
それが、凄く嫌だ。
「でも、私……」
「気にならねぇのかよ」
「っ、気になる、けどさ」
「そういやテメェ、今度改めてお詫びするとか言ってたよなァ」
「うっ……」
思い出される、先日の夕飯の時刻。
私が消し忘れた火を爆豪くんが消してくれ、そのお詫びがどうこう。って話をしたんだっけ。
まさかこんなお詫びを要求されるとは思っていなかったけれど、あの時お詫びの話をしたのは私。
断れずに、「分かった」と口にしてしまった。
「今週日曜、駅前集合な」
____
そう爆豪くんに言い切られてしまって、私は渋々、外出申請を出したのだった。
行っても行かなくても、きっと私は悩む事にはなるし、誘いを上手く断らなかった私が悪かった。
だから仕方ない。
そう自分に言い聞かせて、私は待ち合わせの駅前へと向かっていた。